593.カカ師匠

 門に着くと招待状の確認だけで、すんなり中に入ることができた。


 ウエルカム・サボテンジュースを渡され、きゅむきゅむと奥に進む。

 宮殿の奥から、ごぉぉぉっと風が吹いていた。


「奥から風が来てるぴよねー」

「本当なんだぞ。涼しいんだぞ」

「ウゴ、それに埃っぽくないね」

「空調で砂が入ってこないようにしているんだな」


 これも工夫というわけだ。

 一本道をちょっと歩くと、コカトリスの着ぐるみがいた。杖をついて歩いているな。


「待っていたぞ、コカ博士」

「ご無沙汰しております。お元気そうで」


 ヴィクター兄さんが丁寧にお辞儀をする。

 どうやらかなりの大物らしい。


 ナナが列からひょっこりと顔を出した。


「師匠も来てたんだ?」

「学会だけはな。英雄ステラと組んで、大きな成果を上げたそうじゃないか。誇らしいよ」

「ふふ、ありがとう」


 ぴこぴこ。

 ……なるほど。どうやらこの着ぐるみの中身は、ナナの師匠か。それなら恐らく、相当な魔法使いだろうな。


 たしかに……この人物の着ぐるみはふわふわしており、高級感あふれる。


「紹介しておきましょう、私の親戚のエルです。今日は勉強として同行しております」

「エルです。お見知りおきを」

「私はカルガンカブィ、カカと呼んでくれ」

「ご丁寧にありがとう」


 きゅむっとカカと握手をする。

 魔力は……よく抑え込んでいるな。しかし握手からはあまり腕の力を感じない。高齢なのだろう。


 一通り自己紹介を終えて、俺たちは宮殿の中を歩いていく。先導はカカだな。


「今回の私は準備役だ。まぁ、招待客を案内したりこの辺りの説明をするくらいだが」


 大廊下にはこれまた大きな窓があるが、これも丸みを帯びている。

 外がほどよく歪んで見えていた。


「砂嵐が近づいているので、部屋の窓は開けないように。中の調度品を過失で汚したら賠償になりますからな」

「ぴよ。砂が入ってきちゃうぴよねー」

「前に砂嵐中に窓を開けたアホウは金貨数十枚の支払いになった」

「こわぴよ」

「なにを思って開けちゃったりしたんだぞ」

「好奇心でしょうねぇ……」


 好奇心が強そうなステラがつぶやくと説得力があるな。


「砂嵐中の外出もオススメしない。必要なものは学会準備員に伝えるか、自分で買いに行くように」

「ああ、わかった」


 とりあえず宮殿の上層の部屋に、俺たちは案内される。


 部屋割りはこの前と同じだな。俺たち家族とナナ&レイア、ヴィクター兄さんで別れることになった。

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