594.べたー、ぐにー
カカの案内で部屋についた。
隣の部屋同士だが、ここでそれぞれの組に分かれる。
家具やらベッド、何もかもが丸っこい。
本当に砂が厄介なんだな……と実感する。
「では私はこれで。夜は晩餐があるから、よろしく」
「ありがとう」
俺は部屋の扉を閉めて、一息つく。
やっと家族以外がいない空間だ。
「ふぅ……」
ここの窓は大廊下に比べると歪んでいない。なので外の様子がよくわかる。
「ウゴ、すごい砂嵐だね」
「宮殿を歩いている間に、砂嵐が来たようですね」
たしかに外はノイズが走ったような光景だ。
白と乳白色の砂嵐が窓に叩きつけている。
「ぴよ! すごぴよー!」
ディアとマルコシアスは窓際にダッシュしていく。
そして海と同じく、窓にべたーと張り付いた。
「やばぴよね……」
「窓は開けちゃダメなんだぞ」
「わかってるぴよ。死ぬぴよね」
死にはしないと思うが……。
しかしディアとマルコシアスは初めての光景を窓越しにたっぷり目に焼き付けているらしい。
「こんな砂嵐、ここでないと見られないからな」
「ぴよ! よく見えないけど楽しいぴよよ!」
「窓の外がよくわからないのが新鮮なんだぞ!」
「なるほど、そういう点が目新しいか……」
盲点だったかもな。
とりあえず砂嵐が終わるまでは宮殿の外へは出られない。
「晩餐までは時間があるが、どうする?」
「少し見て回りたいですね」
「ウゴ、そしたら俺、ディアたちと一緒にいる!」
ふむ、ステラは宮殿を見て回りたい……子ども達は部屋でお留守番か。
ディアたちは顔をぐにーと窓に押しつけている。
「わかった、じゃあ俺はステラと一回りしてくる」
「ぴよ! おもしろいのがあったら、教えてぴよよ! 見に行くぴよ!」
「今は窓の外を見てるんだぞ」
「いってらっしゃいぴよ!」
「ウゴ、気をつけて!」
「いってらだぞー!」
ということで、あてがわれた部屋をステラと出た。
ぽにぽに。
廊下を歩きながら、俺は隣のステラに話しかける。
「しかし珍しいな、見て回りたいなんて」
「ええ、少しばかりスタンスを確認しておきたくて……」
「スタンス?」
ステラが真面目な顔で、俺にずいっと近寄る。
着ぐるみの目の穴いっぱいにステラの顔が広がった。
「どこまで野ボールのせんで――いえ、有用性を言ってのけていいのかな、と!」
……今、宣伝って言いかけたか?
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