560.トロッコのお披露目
まぁ、そんなことがありつつもアイスドラゴンの牙を食べ進めた。
「ぴよっ! かあさまのも食べてみたいぴよ!」
「いいですよ。交換しましょう!」
「ありがとぴよ!」
こんな感じで交換しあいながら食べ切った。
結構食べた……というか、かき氷でお腹いっぱい食べたのは初めてかもな。
「ふぅ……おいしかった」
「ありがとうございます……!」
「ウゴ、たくさん果物食べた!」
ちなみにウッドもステラも頭キーンとはならなかったようだ。
まぁ、ステラはゆっくり食べてたからな。
「ぴよー。満足ぴよよー」
「わふ。食べたんだぞー」
ディアとマルコシアスはふにーっとうつ伏せになっている。かわいい。
「やはり暑くなると氷はおいしく感じるな」
ディアを撫でつつ、俺は呟いた。
「これなら他の人も食べたくなると思う」
「そうですね……。ちょっとシロップのレシピを整理します」
こうしてアイスドラゴンの牙もメニューに加わることとなった。
まぁ、季節限定があってもいいだろうし。
◇
そうして数日。
ついに魔導トロッコの仮運用の日になった。
工房の前には完成品のトロッコが置かれている。
「もぐー! どうですもぐ!」
「うん、出来上がっているな……!」
ものすごい、ぴよっとしている。
コカトリスの頭を模した先頭車両に、ぴよシート。
「汽笛にも工夫を重ねました」
満足げなのはレイアだ。
今日は彼女も万全のぴよ帽子で参加していた。
「その謎の紐の技術を使ったとか……」
引っ張ると『ぴよー!』する帽子である。
「ふふふ……! 極めて高品質なコカトリスの鳴き声ですからね!」
まぁ、ここまで来たらぴよみが増えようと増えまいと同じことかもだが。
『ぴよよー!!』
なので汽笛ももちろん『ぴよー!』である。
「このたびは魔導トロッコの完成、おめでとうございます」
口上を述べたのはザンザス議会からの特使だ。
髪も髭も白くなったお爺さんである。
ただ、背はぴしっとして片眼鏡で眼光鋭い。
今回は村だけじゃなくて、ザンザスにも繋がる第一歩になるからな。
特使がわざわざやってきたのだ。
「ありがとう、これもザンザスの協力があってこそだ。厚く御礼申し上げる」
「いえいえ、こちらこそポーション類では大変助かっております。これからも良い協力が出来ればと……」
俺は話しながら、意外に思った。
この人からはぴよみを感じられない。
やはりコカトリスがそう好きでない人もいるのか……と、そこで気がついた。
「…………」
気のせいかと思ったが、違うな。
片眼鏡の形が、たぷたぷっとしたコカトリスのシルエットだ。
うん、コカトリスを見慣れていないと丸っこいレンズにしか見えないだろうが。
俺はちょっと安心した。この人もレイアときっと同類なのだ。
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