559.対決、アイスドラゴンの牙

「ぴよー……! きれーぴよね」

「わふ、きらきらしているんだぞ」


 ディアとマルコシアスは目を輝かせて、かき氷を見つめていた。

 まだシロップもトッピングもないので、柔らかく削った氷の集まりだが……。


「ちょっと味見ぴよ……!」

「ウゴ、そのまま?」

「ひとくちだけ……ぴよ!」


 ディアがスプーンでアイスドラゴンの牙を少しすくって、口に運ぶ。


 もしゃ、もしゃ……。


「……どうだ?」

「完全に氷ぴよね! やわらか氷ぴよ!」

「そうです、まだ氷です!」


 やっぱりそうだよな。


「じゃあ、あたしはこのイチゴシロップかけちゃうぴよ!」


 イチゴシロップが入ったボウルを羽で取る。ディアはゆっくりイチゴシロップをスプーンでかけていく。


「我はこの蜂蜜レモンにするんだぞ」

「ウゴ、俺はメロン!」

「俺もメロンだな」

「では私はマンゴーで!」


 こうしてシロップをかけて、いざ実食。


「はふぴよ……。ひんやりおいしーぴよ!」


 ディアは嬉しそうにアイスドラゴンの牙を食べ進める。


「まだトッピングもあるぞ」

「ぴよ! そうぴよね……! まだここに追加できちゃうぴよよ……!」


 ディアがじーっと用意されたトッピングの山を見つめる。ものすごい真剣だ。


「ぴよ……。ぴよ……」

「我はオレンジにするんだぞ」

「ぴよ! 思い切りいいぴよね……!」


 ぴよ、ぴよ。

 ディアの羽はまだ動かない。


「ぴよ……ぴよ……。決まったぴよ!」

「おお、どんな風にするんだ?」


 俺の質問にディアがどーんと羽を広げる。


「ぜんぶぴよ!」

「ウゴ、全部いっちゃう!?」

「いっちゃうぴよよ! ちょっとずつ、全部乗せるぴよ!」

「いいですね、それ!」


 ステラも乗り気だ。

 ディアはさっそく、少しずつトッピングを乗せていく。


「ぴよ……意外とやばぴよね……」

「崩れそうなんだぞ」


 ぐらぐら。


「……こっちにもう少し盛ったほうがいいかも」

「ぴよ! わかったぴよ!」


 ちょこん。イチゴとメロンを盛っていく。


「ふー、どうぴよ!?」

「ウゴウゴ、山盛り! たくさん!」


 そこにはデカパフェかと思うほどの、果物山盛りかき氷があった。


「恵みに感謝ぴよー!」


 パクパクパク!


 ディアがかなりのスピードでアイスドラゴンの牙を食べ進める。


「あっ、そんなに急いで食べると……」

「ぴよ?」


 ディアが首を傾げた瞬間、となりのマルコシアスが声を上げる。


「わふっ! 頭がキーンとするんだぞ!」

「!?」


 ……マルコシアスのほうだったか。

 ステラが軽く身を乗り出す。


「マルちゃん、そういうときは頭を冷やすといいですよ!」

「わふ? そうなんだぞ?」

「じゃああたしが冷やすぴよね!」


 ぴと。ディアが左の羽でマルコシアスの額を撫でる。


「……わふ」

「どうぴよ?」

「楽になったんだぞ! また食べるんだぞ!」

「あっ、また急いで食べると」


 俺の言葉でマルコシアスのスプーンが止まる。

 どうやら踏みとどまったらしい。


 じぃー。

 マルコシアスがボウルを眺めている。


 食べたいのに食べられない。

 そんな顔付きだ。


「……中々の強敵、だぞ!」

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