540.夢の世界へ

「どうですか? 良いですか?」


 ステラの問いかけに、俺とナールは頷く。


「ああ、ふっくら気持ちいい」

「眠たくなるのもわかりますにゃーん」


 俺達はぴよシートのフィット感を楽しむ。


「ウゴウゴ、柔らかくていい!」


 ウッドも楽しそうだな。


「では……少し揺らしてもいいですか?」

「えっ?」

「いえ、耐久性はモノを載せたりすればわかりますが……揺らしてどうかは、人がいないと」

「…………」


 確かにそうかもしれない。

 俺が実験台になる必要があるかは置いておいて。


「にゃー、それもそうですにゃん。どうぞどうぞですにゃーん」


 まったりナールが軽く答える。


「想定される振動はイスカミナの計算でわかっています。いきますよ……!」

「はいにゃーん」


 ステラがナールのそばにゆき、ゆっくり屈む。


「その勇気に敬意を評して……! 行きますよ!」

「どうぞですにゃーん」


 ごくり。


 ステラの瞳が光った。


 ……ゆさ、ゆさ……。


 ぴよシートが非常にゆっくり、小さく揺れる。


「にゃん? 揺らしてますにゃん?」

「ええ、この揺れでいいはずです」

「そうですにゃん……。この揺れは……効きますにゃん」


 ナールの声がだんだん小さくなる。


「眠くなったら、どうぞ寝てください。それもまたぴよちゃんシートの力なのです」

「にゃーん。そうかも、にゃーん……」


 すすっとステラがぴよクッションをナールに手渡す。


 ふかふかのシートとクッション。

 それは極上の揺りかごでもあるのだ。


「にゃーん、にゃーん……」


 すやぁ……。


 ナールは丸まって夢の世界へ旅立った。


「……うむ、それもまた良し」


 鉄道で寝るのが是か非か。

 それは深い話である。


 個人的には移動手段である以上、寝ることができるほうがいいという立場だが……。

 絶対に寝られない輸送システムはヤバいと思うのだ。


「ウゴ、気持ち良さそう……」

「ぴよちゃんに囲まれていますからね。夢の中でもきっとふわもっこでしょう……!」


 ニャフ族もよくコカトリスと一緒にいるからな。


「では、エルト様も揺らしていいでしょうか? ゆらゆら……これもテストなのです!」

「お、おう……。お手柔らかにな」


 ……ゆさ、ゆさ。


 ステラが真剣な眼差しで俺のぴよシートを揺らす。


 うむ……。


 気持ちいい。ぴよのつぶらな瞳に見守られて……俺も夢の世界へと旅立っていくのだった。


 最後にステラの声が聞こえてくる。


「さて、他の人にも試さないと……ですね!」

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