539.ぴよシート
「にゃんにゃーん」
ナールは事務室で魔導トロッコの資料をまとめていた。
もちろん、広報宣伝も兼ねての資料まとめである。
そんな事務室にブラウンが書類を持ってくる。
「アオリ文はこんなものですかにゃん?」
『新体験の乗り心地が、あなたを待っています! 極上のドリンクと一緒にお楽しみください!!』
その他にもいくつかの案が書いてある。
「なかなかいいにゃ。村の飲食もアピールしているのがいいにゃ」
「魔導トロッコにはテーブルもつきますにゃん。揺れてもこぼれないコップ、ストローも必要ですにゃん」
ブラウンの言葉にナールが頷く。
「もちろんにゃ。魔導トロッコの木組みおもちゃも投入するにゃ。振動で疲れた体には、ロウリュや土風呂にゃ」
ナールの頭の中には様々なプランが駆け巡っていた。
「今日は座席シートの試作品が上がってくるみたいにゃ。これから忙しくなるにゃー!」
「「にゃー!!」」
◇
数日後、俺の家にナールがやってきた。
座席シートの座り心地を軽く確かめるらしい。
「振動等、魔導トロッコの本番とは違うところも多々ありますが……」
「大丈夫ですにゃ! ところで座席は――」
「これですっ!」
ステラが作業場からぴよっと座席を持ってくる。
「皆の分もありますよ!」
「ウゴ、俺のも?」
「もちろんです、2人分で!」
ステラがえっさほいさとぴよシートを持ってくる。
俺はトールマン用、ナールは小さめ種族用だな。
ふぅむ、コカトリスだ……。
「ぴよ、なかなかいいぴよね」
ディアが自分用のぴよシートを羽でぺしぺしする。
「やわらかーなんだぞ」
子犬姿のマルコシアスも、肉球ハンドでぴよシートの手触りを確かめていた。
「ふもっと感、いいんだぞ……」
「ぜひぜひ、座ってみてください!」
促され、ぴよシートに腰掛ける。
「にゃー……ふにゃ、ふっかふかにゃ……!」
「おお、これはいいな……!」
ナールと俺は顔を見合わせる。
「適度な沈み込み、フィット感、布の柔らかさ……リラックスできますにゃ!」
「うむ、まさに……! これはずっと座っていたくなるな」
外見はぴよだが……うん、そこも重要な点である。
「あちし達のサイズにもフィットしてますにゃーん……」
「ありがとうございます……!」
ステラも喜んでいる。
「ディアとマルコシアス、ウッドはどうだ?」
「ウゴ、いい感じ!」
2倍の大きさのシートにウッドは腰掛けているが、大丈夫なようだな。
「……ぴよよー……」
「わふぅ、気持ちいいんだぞ……」
……ディアとマルコシアスはお昼寝の体勢に入っていた。
まぁ、それだけ良いシートだということだな。
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