460.集団戦

 俺が第2階層へ入ってすぐに感じたこと。

 それは深く濃い闇である。


「暗いな……!」


 空というか、上に光がない。


 あるのは星クラゲのぼんやりとした光。

 それとぴよみ(ナナとヴィクター含む)の光だけだ。


「ウゴ、かあさん……また投げる?」

「そのほうが良さそうですね。しかし、地面が……土です。投げられる石はなさそうです」


 ステラがすっと屈んで地面を確認している。

 俺は着ぐるみなのでわからないが……。投げられるような石はないらしい。


「投げるものなら――ウッドがシードバレットで用意できるんじゃないか?」

「ウゴ! 小さいけど種ならシードバレットで出せるよ!」

「あっ、それがありましたね……!」


 ウッドが腕から種を生み出す。

 空を浮かぶ星クラゲには、やはり投擲攻撃が有効だな。


「ウゴ、どうぞ!」

「ありがとうございます! えいっ!」


 ステラが種を受け取って投げる。


 シュゴォォォッ!


 物凄い音が鳴って、星クラゲに突き刺さる。


「私も……やりますわー!」


 ジェシカが荒れ狂う水の竜巻を召喚した。

 それは星クラゲの群れを巻き込んで、大打撃を与える。


「俺も……!」


 地面が土であれば、植物魔法は効果的に使える。


「大樹の腕ッ!」


 ぐわっと大きな木の腕が地面から生まれる。

 かなりの魔力をつぎ込んだので、10メートルを超える高さになった。


「ぴよよ……」(くらぁ……)

「ぴよー!」(照らそー!)


 コカトリスは目から光を発して、周囲を照らしてくれている。


 その光を頼りに、俺は巨木の腕を操って星クラゲを叩き落としていく。


「ほう、やはり土の上だと違うな……」


 ヴィクターが風の弾を投げながら、話しかけてくる。


「……なんだか毛がチリチリになっているが、それはどうしたんだ?」

「あの雷撃を浴びた。ガワの毛は見た目重視だからな、耐久性はそれほどない」


 ヴィクターがぴこぴこぴこと羽を軽やかに動かしながらナナを指し示す。


 ナナは――あれは雷撃を放つ魔法具か。

 近寄る星クラゲを青白い雷で撃退している。射程は短いようだが、攻撃力はかなりのモノみたいだ。


「まぁ、おかげで肩こりが良くなったから構わんのだが」

「お、おう……」

「体のメンテナンスは大事だぞ。着ぐるみ道は負荷が高い。魔力のアシストはあっても……な」


 ずいっとヴィクターが顔を寄せてきた。

 ……着ぐるみ道には突っ込まないことにする。


「周囲からどんどん集まるな……ん?」


 コカトリス達が周囲を照らし、星クラゲが闇の中からこちらに迫ってくる。


 ある種、幻想的な空間であるが――その闇の向こうにひときわ大きなクラゲがいる。


 光る大きさからすると……全長5メートル以上か?

 遠近感がいまいち掴めないが。


 チリチリ着ぐるみのヴィクターが呟いた。


「どうやらデカブツも目覚めたようだな」

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