459.第2階層へ
「肩こり……?! いや、他は……!?」
博士の着ぐるみは煙を上げたまま、ぴこぴこと羽を動かした。
ぴぴぴこここここ。
早い、高速羽ばたきである。
どうやら本当に肩こりがなくなったらしい。
「大丈夫だ。表面の毛がチリッとなっただけで、ダメージは受けていない」
「中身も?」
「中身……? 何のことかな?」
ぴぴぴこここここ。
「……本当に大丈夫? 例えば頭とか」
「ふむ、この着ぐるみはそんなヤワに作っていない。連続で喰らったならマズイが、さっきの一瞬なら本当に大丈夫だ。それより――」
闇の奥から星クラゲがぞくぞくと現れる。
ナナのライトから、連鎖的に星クラゲが目覚めていき――その数は膨れ上がるばかりだ。
「これほど近いと、刃の竜巻は使えないか。だが――」
ヴィクターが魔力を高める。
もふっとハンドの上に、つむじ風が生まれた。
「君のほうが前線に向いてそうだ。俺は後方から撃ちもらしがないようにする」
「わかった。もうすぐ後続も来るだろうしね」
ナナがダッシュし、電撃バリバリ棒を構える。
ててててー。
「いくよっ!」
ナナが電撃バリバリ棒に魔力を通す。
まもなく青白い雷撃がナナの周囲に弾け飛んでいく。
バリバリバリ!!!
寄ってきた星クラゲが焼き尽くされていく。
「こっちにもいるな……。だが、肩こりが消えた俺に死角はない」
ヴィクターがつむじ風を星クラゲの群れへと投げつける。
ズドンッ!!
つむじ風が接触すると猛烈な爆風が巻き起こり、星クラゲをふっ飛ばしていく。
その間に、ヴィクターは次のつむじ風を生み出していた。
うまく当てる必要があるものの、この魔法は連射と効率に優れる。欠点は……使うものの身体能力に左右されること。
肩こりや腰痛持ちには厳しい魔法なのだ。
「そろそろ後続が……」
ちらっとヴィクターが歪みを振り返った。
と、空中の歪みからひょっこりとコカトリス2体が頭を覗かせている。
だが、こちらに降りてこない。歪みから頭だけ出ている変な構図になっていた。
「おや……?」
ヴィクターが小首を傾げると、コカトリスがぴよぴよ鳴いている。
「ぴよ……」(ちょっと詰まりました……)
「ぴよよ」(ダブル飛び込みは無茶だったぜ)
「ぴよぴよ……」(あっ、雷……)
「ぴよっぴよー!」(おへそが取られちゃうー!)
「ぴよ!」(あたいは右に力を込めるから、君は左にー!)
「ぴよー!!」(わかった、よいしょー!!)
ぴよぴよぴよ!
コカトリスが思いっきり力を込めると、すぐに抜け出せた。
どうやらちょっとだけ詰まっていたようだ。
ぽてっ。
コカトリスが歪みからぬけて、そのまま地面に落下した。即座に立ち上がり、羽をぴこぴこ揺らす。
「ぴよ!」(やったぜ!)
「ぴよっぴ」(よーし、たぷを減らすぞー!)
続いて、ステラ達も一斉に歪みから降り立ってきた。
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