417.作戦決定
その言葉にルイーゼが顎に手をやる。
「大発生、か……。するとリヴァイアサンは星クラゲに追い出されたのか? そーいう構図なのか?」
「可能性は高い。まだデータは多くないが」
「僕の見たところ、星クラゲの毒も強化されていたからね。リヴァイアサンと言っても、大量の毒クラゲがいたら分が悪い」
ヴィクターとナナの言葉に船乗り達は戦慄する。
「あのリヴァイアサンも……?」
「星クラゲってそんなにヤバい魔物なのか」
「俺の親も星クラゲの毒で死ぬような目にあったことが……」
どよめく船乗り達。
レイアがそれを制した。
「星クラゲを討伐するなら、やるべきことがいくつかあります。もちろんここで一旦、退くのも手ですが……いかがされますか?」
その瞳には力がこもっている。
ルイーゼもふむ……とクロウズを見た。
現状、星クラゲの対処については困難が予想される。もちろん、普通の冒険者の言葉なら聞くにも値しない。
だがレイアは歴戦のギルドマスターであり、一蹴できるものではない。
「我らもやっとここまで船団を集めたのです。……お聞かせ願いましょう」
「はい! 私が今、考えました――ぴよぴよ大作戦をお聞きください!」
……クロウズは後悔した。
もう、遅かったが。
◇
夕方。
ぴよぴよ大作戦の概要を聞いた後、会議は終わりになった。
やれやれ……と執務室でルイーゼが首を鳴らす。
この場にいるのはルイーゼとヴィクター、ナナだけ。親しい仲での話し合いである。
なお、ヴィクターもナナもまだ着ぐるみは脱いでいない。ぴよ率は高めのままだ。
「クロウズのあの顔、面白かったな。にしてもレイアは面白いやつだ。ナナが入れ込むのもわかる」
「入れ込んでない」
「はぁ? めっちゃ……踏むな、ぐりぐりするな!」
テーブルの下でナナがルイーゼの足を踏む。
「余計なことを言うな」
「ちぇ。はいはい」
「……ふむ。わかるぞ。レイアのことは月刊ぴよで知っているだけだったが……なかなかの傑物だな。ネーミングセンスも悪くない」
「ネーミングセンスはあんまり良くないと思うけど
、兄貴」
「『ぴ』と『よ』をつけておけば、間違いはない。世の中はそう出来ている」
「…………」
ナナはトマトジュースをストローで飲む。
ナナとヴィクターは見知った仲だ。ホールド経由で付き合いがあるので、よく知っている。
貴族院にいた頃もぶっちぎりの変人、秀才として名高かったのがヴィクターである。
面倒見はとても良いので、ルイーゼのように今も慕う者は多い。
北の国でも無償で魔物退治を買って出ていた。
「とりあえず、ぴよぴよ大作戦……か。それに従ってあたし達も動くよ。表向きは渋々って感じにするけどヨロシクな」
「……この作戦は船乗り達の協力なしには成立しない。任せるよ」
「俺は一旦、戻る。あとは頼む」
「明日の昼にまた来るんだよな? 何かあるのか?」
パタパタとヴィクターが羽を振るう。
「娘のピアノ発表会がある。では、また明日」
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