399.港の桟橋

 朝ご飯を部屋で食べ、いよいよ出陣である。


「ぴよよー、頑張るぴよ!」

「はい、気合入れます……!」


 ステラの腰には二本のバット。

 頼もしい限りだ。


 ディア、マルコシアス、ララトマの非戦闘員はレイアが見てくれる。


 朝日が強烈に街を照らす。

 南にあるためか、明らかに暖かい。


 ヒールベリーの村だと、まだ皆寝ている時間だな。

 宿舎を出るとすでに人がいっぱいだ。


「気合入ってるな」


 ルイーゼがふよふよと浮きながら待っていた。


「他の人達は? もう港へ行ったのか」

「そだよ。集合場所はわかってるし。案内するぜ」


 どうやらザンザス周辺とここらの船乗りは、少し気質が違うらしい。

 さっさと現地集合か……。気が短そうだな。


 ぽよぽよと港へ歩いていくと華やかさがなくなり、無骨なレンガの建物が増えてくる。

 そして潮風をさらに感じるようになってきた。


「この辺りは倉庫区画だ。集合場所はもう少し行ったところだぜ」


 宿舎から二十分くらい歩いたか。

 視界が開けて港の桟橋が見えてきた。その向こうにはエメラルドグリーンの海が広がっている。


「ぴよー! 海ぴよねー!」

「上から見下ろすのとは、また違うんだぞ」

「ここは釣りや観光も盛んだからな。自慢の海だぜ!」


 コカトリス二体もうずうずしてる。


「ぴよ……」(海や……)

「……ぴよよ」(……たぷを燃やさねば)

「ま、まだストップです!」


 桟橋にはすでに多くの兵士がいた。

 武器を携行して鎧を着てるからすぐにわかる。


 先頭にはクロウズが立っている。


「ルイーゼ様、お待ちしてました」

「おうよ!」


 それから出発前の点呼と号令、それに注意事項の話があった。クロウズが羊皮紙を読み上げる。


「昨日もリヴァイアサンが沖合に現れたとのこと。幸い、物的損害はありませんでしたが……」

「リヴァイアサンの出た航路は封鎖しなくちゃいけねぇ。大損だ!」


 ルイーゼが大声を張り上げる。


「てなわけでぱぱっと片付けるぞ! 人員の配置はさっき言った通りだ。ザンザスとヒールベリーの村の精鋭は……潜水部隊だな」


 その言葉に船乗りと戦士たちがどよめく。


「命知らずだな……」

「リヴァイアサンのいる海に潜るんだぞ? 死ぬぞ……」

「連携は大丈夫なのか?」


 ふむ。やはりか。

 リヴァイアサン討伐はいくつかの役割に分かれる。


 ひとつは潜水。

 リヴァイアサンの位置を確認し、誘導する。

 ときには餌をまいて引きつける。


 次に指定したポイントで囲んで倒す。


 どちらも大切だが、当然潜水役のほうが危険である。


「……良いのですか?」


 クロウズが真剣な目で問うてきた。

 ルイーゼがひらひらと手を振る。


「本人達の希望だからな。まぁ、ナナもいるし大丈夫だろう」

「ステラとジェシカ、それにエルちゃんもいるからね」


 ……俺は静かに小首を傾げる。あざとかわいく。

 ここで発言すると目立つからな。


 ステラをちらっと見ると、ぐっと親指を立てていた。この動作はポイント高いらしい。


 そしてバットを構えるとステラは宣言する。


「大丈夫です! お任せください!」

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