398.窓にべたー

 翌朝。

 もぞもぞと動く気配を感じて目が覚めた。


 ……にゃーにゃーとウミネコが窓の外で鳴いている。押しては返す潮騒が妙に心地良い。


「すやー……ぴよー……」

「わふー……」

「……んぅ」


 ステラが俺の横に寝ている。

 そんなステラと俺の間に、ディアとマルコシアスが寝ていた。


「まだ少し早いか……?」


 でも朝の海が見たくて、俺はそろりと体を起こした。


「……ぴよよ……」

「ぐぅ……ぴよー……」


 ウッドの体の向こうに、丸まったコカトリスのもこもこが見える。

 まだ寝ているようだな。


「……エルト様?」


 ステラが目をこすりながら声をかけてきた。


「悪い、起こしたか」

「いえ……わたしもちょうど目が覚めたんです。海が気になって」

「俺と同じだな」

「ふふっ、エルト様も? 朝の海が気になりますか?」

「ああ、ここに到着したのは夕方だしな」


 ステラとひそひそ話していると、突然ディアが起きた。


「ぴよ。おはぴよー」

「わうー……おはようだぞ」


 マルコシアスも起きた……というより、起こされたらしい。


「ウゴ……起きたよ」

「……起きましたです!」


 ウッドとララトマも半身を起こす。どうやら一斉に起きたらしい。


「おはようございます……!」

「おはよう、皆」


 しかしコカトリスだけはまだ――。


「ぴよっ!」(むくりっ!)

「ぴよよー!」(朝だー!)


 寝ていると思ったら、コカトリスも起きた。

 ぱっと首を起こしてぴよぴよし始める。


「海! 海ぴよー!」

「朝の海はまた格別なんだぞ!」

「そうだな、皆で見るか」

「いいですね……!」


 ディアとマルコシアスを抱えて窓際へ連れて行く。

 大部屋なので窓ガラスはかなり大きい。

 ワイドに海を眺められるのだ。


「はぁ〜……いいぴよねー……」

「わふー、心洗われるんだぞ」


 太陽光がきらきらと海を照らしている。

 たくさんの船が浅瀬や沖合を行ったり来たり……。


「街もすでに起きているようですね」

「ウゴ、もう通りにも人がいる」


 ウッドがララトマを抱えてこちらに来た。

 ララトマは照れながらもそのままにされている。


「わぁ……昨日の夕方や夜とは全然違うです!」

「ぴよ! きれーぴよねー……。あっ、向こうに大きなお船があるぴよ!」

「どれどれ……あの離れたところか。確かにあれは大きそうだな」


 ここは浅瀬で小船が多い。

 大きな帆船は少し離れたところに停泊させているのだそうだ。


「ぴよー!」(すごぴよー!)

「ぴよよ〜!」(泳ぎがいがありそう〜!)

「ぴよちゃん……ガラスにべったりくっつかなくても……」


 興奮しているコカトリスはガラスにべたーと顔を押し付けている。


 ……ちょっと面白い絵になっているな。


 しばらくそうしていると、本当に気分が良くなる。

 なんというか、海を眺めるのにはヒーリング効果があるのかな?


 この世界で海を見るのは初めてだからか。

 素直に感動できる。


「さて、そろそろ朝ごはんに行くか」


 コキコキと首を鳴らすと、ステラがすすっと横に来た。


 その手にはリボンの付いたコカトリスの着ぐるみの頭がある。

 早い、さすがステラ。


 ステラの顔はにっこにこである。


「……どうぞ!」

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