331.ベア族のポンガ

 馬車に乗っていた人達がぞろぞろと降りてくる。

 ……ドワーフじゃなかった。


 全身が濃い色の毛に包まれた、熊の獣人達だ。

 ゴツい体格で、俺より背丈が頭一つは高い。


 ベア族だった……か?


 その姿を見て、記憶が蘇ってきた。

 ゲームではプレイアブルではなかったが、山のエリアにちょいちょい住んでいた気がする。


 冬になると眠くなる体質、というのだけ印象に残ってるな。


「あなたがここの領主様ですかな!? 若いのに大したものですぞ! グワハハハ!」


 一団のリーダーが大声で挨拶してくる。

 気の良さそうなおっちゃんだ。


 ……ウッドに乗っている俺を不思議に思わないのは、きっと村の事情を知っていたりするからだな。

 俺のことも髪の色で大体わかるからな。


 でないとドリアードの土風呂でびっくり仰天するはめにもなるし。


「お嬢に呼ばれて参上いたしました、ベア族のポンガと言いますぞ!」

「挨拶ありがとう、このヒールベリーの村の領主のエルトだ」


 ウッドから降りた俺はポンガと握手する。


 ……もこ。


 むっ。思ったより柔らかい。

 もこもこしてる……。


「おっと、そういえば……お嬢だったか。イスカミナのことかな?」


 ベア族を呼んだのはイスカミナだろう。

 俺は握手を終えて、イスカミナの乗る馬車を見た。


「もっぐ! 私ですもぐー!」


 イスカミナがぴょんと馬車から降りる。


「お嬢、元気そうでなによりですぞ!」

「もぐ! 健康的な毎日を送ってるもぐ!」


 イスカミナはポンガへ駆け寄る。


「もぐ、まずは村の人達に挨拶もぐ! そのあとは――魔導トロッコもぐ!」


 ◇


 ポンガ達はしばらく村に滞在するらしい。


 挨拶を終えた俺は、魔導トロッコの保管倉庫へと向かう。冒険者とは一旦解散だな。

 パズルマッシュルームをもにゅもにゅするらしい……。


「彼らは魔導トロッコ工事の専門家ですもぐ!」

「お恥ずかしい! お嬢の知識あってのものですぞ!」


 ちなみにポンガがイスカミナをお嬢と呼ぶのは、前に彼女の世話になったからだそうだ。


「水をたっぷり含んだ山の工事がありましてな、そのときにお嬢の世話になったのですぞ!」


 ポンガがにこにこと微笑んでいる。


「いや、まさに難工事でしたぞ。お嬢がいなかったら三回は水脈に当たって溺れてましたな! グワハハハ!」

「もぐ! 過酷な現場だったもぐ!」


 ……笑い事ではない気がするが。

 まぁ、もういい思い出になっているんだろうな。


 そんな話をしながら、保管倉庫へと到着した。魔導トロッコはこの倉庫の奥にある。


 灯りをつけ、現物を確認すると――ポンガはほぉぉ……と感嘆した。


「この輝きは間違いなく、高純度のミスリルですな! 細工はヴァンパイアの熟練工によるものでしょう……! 実用性と美術性が融合しておりますぞ!」

「もぐ! とってもイイもぐ!」

「ふむ……あとは改造と路線が出来ればテスト走行できる感じか?」


 魔導トロッコの下部には、前にはなかった部品が色々と取り付けられている。これがエンジンやブレーキといった走行部分になるわけだな。


 俺の言葉にイスカミナが胸を張る。


「走るだけなら、もう大丈夫ですもぐ!」

「ん……? 走るだけ?」

「止まりませんもぐ。ブレーキまだですもぐ」

「それはまずくないか?」


 俺の脳裏にマルコシアスのばびゅーんが思い出される。あんな感じで地上を進んだら大惨事だ。


 いや、あれもブレーキはなかったか……。

 ステラが超人的にコントロールしてるだけだ。


「領主様、その心配はないですぞ!」

「大丈夫ですもぐ!」

「そ、そうなのか……?」


 魔力が薄いと速度は出ないとは聞いたが。

 そもそも魔導トロッコの実物を知らないからな。


「私やポンガだと、体重的にちょっとわかりづらいもぐ。ここはアナリアに試乗してもらうもぐ!」

「テスト路線なら、すぐ組み立てできますぞ!」

「さっそくやるもぐー!」


 ……お、おう。


 というわけで、早くもテスト走行が決まったのであった。


領地情報


 地名:ヒールベリーの村

 野球チーム名:ヴィレッジ・コカトニア

 特別施設:冒険者ギルド、大樹の塔(土風呂付き)、地下広場の宿、コカトリス大浴場、コカトリスボート係留所、たくさんの地下広場

 領民:+12(ベア族のポンガ、魔導トロッコの職人達)

 総人口:255

 観光レベル:B(土風呂、幻想的な地下空間、エルフ料理のレストラン)

 漁業レベル:B(レインボーフィッシュ飼育、鱗の出し汁、マルデホタテ貝)

 牧場レベル:C(コカトリス姉妹、目の光るコカトリス)

 魔王レベル:D(悪魔マルわんちゃん、赤い超高速)

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