330.発展は進む

 自宅にて。


 あとは野ボール関連商品も問い合わせが来ているな。これはステラの活躍によって、みたいだが。


「バットとユニフォームはドワーフ達のほうが興味があるみたいだな。あとは東の国からもちょこちょこ注文が入ってくるし……」

「徐々に広がっているわけですね……!」


 ソファーに腰掛けているステラは、ディアとマルコシアスをふにふにしている。


「ぴよ! ドワーフの人達は興味あったみたいぴよ」

「ヴァンパイア達からはどうなんだぞ?」

「着ぐるみ種族だからか、バットはいくつかあるが……ユニフォームはあまり来てないな」

「むぅ、仕方ないですね……」


 あの着ぐるみには汚れ防止機能とか色々あるからな。こだわりもあるし。

 だからドワーフのほうが興味あるのは意外ではない。


「でもナナぴよもバット振ってるぴよ。きっと広がっていくぴよよ!」


 ぽむぽむとステラを撫でるディア。

 なんだかお姉ちゃん気質が出てきた。


「ええ……村の人達も徐々に増えてきてますからね……! 頑張ります!」


 ステラがめらめらとやる気に燃えている。

 ふむ……やはりステラは野ボール関連になると燃えるな。


 でもやりがいのあることはいいことだ。

 ステラの野ボールでホールド兄さんの破産の危機も救われたんだし。


 ◇


 地下通路の探索もステラが加わったことで、スピードアップしていった。


 今は村から離れたところに、冒険者と一緒にきている。


 何の変哲もない茂みだ。

 ステラはその茂みをごそごそと調べていた。


「ふむふむ、この辺りですかね……」


 それを俺とブラウンとアラサー冒険者は静かに見つめていた。


「にゃん。割と凄いことをしてますにゃん……」

「道筋の経路から地上への扉を見つける、言うのは簡単ですが……」

「出来ればスピードアップは確かにするな……」


 ステラの提案してきた作戦はこうだ。

 一方の部隊が地下から進み、もう一方の部隊は地上で扉を探す。


「すでに法則性はある程度、見えてますから――あっ!」


 ステラが叫ぶと、バットを振り上げる。


「ありましたよ! この扉じゃないですかね……!」

「はやっ! さすがステラだな……!」


 駆け寄って見てみると、確かに地下通路への扉だった。きちんと発見できたわけだな。


「凄いぞ、当たりだ!」

「えへへ……!」


 ステラがにこーと微笑む。


「いやぁ、地上からも探せるもんなんですねぇ……」

「にゃん。感覚が鋭すぎるにゃん……!」

「これで先回りも容易になったわけだな。そうしたら……」


 ステラがバットをぐっと握る。


「挟み撃ちですね、どんどん行きましょう!」

「「おー!」」


 ◇


 夕方。


 今日も新たな地下広場を見つけ、地下通路の探索を終えた。


 俺とステラはウッドの背に乗っている。


「ウゴウゴ、順調!」

「そうだな。ベリーマッシュルームもどんどん色つやが良くなっていくし……」

「パズルマッシュルームもたくさんですしね……」


 ちらっと後ろを見ると、台車にパズルマッシュルームが大量に積まれている。

 本日の収穫――もとい、討伐した結果である。


「ぴっぴよー」(もにゅって運べー)

「ぴよっぴよー」(今日も大量〜)


 今回もアルバイトぴよ達はパズルマッシュルームを担いで運んでいる。

 馬車と同じ速度なのはいつ見ても驚くが……これでも本気ではない。本気だと余裕で馬を追い抜くからな。


 夕焼けに照らされた大樹の塔が近付いてくる。

 隣には馬車の隊列とパズルマッシュルームをもにゅもにゅしているコカトリス達だ。


 村の入り口に到着すると、そこには山をかたどった紋章を付けた馬車がいる。

 ここらではあまり見慣れない紋章だが――今の俺には知識がある。


 あれはドワーフがよく使う紋章だな。

 ということは……馬車でやってきたのはドワーフ達か?


 俺の村には金属関係の輸出物がない。ほとんど植物だからな。

 なのでドワーフ達が来る頻度は少ないのだが。


「もぐ! もしかして……!」


 探索に同行していたイスカミナが、馬車から顔を出す。その目はきらきらと光っていた。


「間違いないですもぐ! 魔導トロッコの資材がきたもぐ!」

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