あ そ ぼ

トモがいつもの公園に遊びに行くと今日は誰もいなかった。

いつもならケンタやカズヤ、ユウキがサッカーをしてるのに…。

仕方なくトモはブランコに乗り、前後に揺らしながらこれからのことをぼんやりと考える。

キィーキィーッ

いつもはみんなの賑やかな声で気にならないブランコの揺れる音が今日はやけに気になる。

キィーキィーッ


ねぇ

突然、背後から声がして驚いたトモはブランコから飛び降りる。

驚かせてごめんなさい。

振り返ると女の子が立っていた。

初めてここに来たんだけど、よかったら遊ばない?

トモと同じくらいの少女の肩まで伸ばした髪が風に揺れる。

淡い水色のワンピースを着て少し大人びて見えるその少女にトモは少し気遅れして黙り込んでしまった。

ね、あそぼ?

トモは小さく頷く。

よかった!何してあそぶ?

トモは少し考えるが思いつかない。

なら、だるまさんが転んだしようよ!

私が鬼ね、向こうから私のところまで来てね。

いくよ、だーるーまーさぁーんが…

少女が線を引いた場所からそろそろと歩き始める。

こぉーろぉーんーだ!

トモは少女から少し手前で止まる。

いくよ!だぁーるぅーまぁさぁーんが…

トモが少女の肩に手を掛けようとしたその時、少女の足元に描いてあった図形が光りトモはこの世から消えた。



戻れ

ワンピースの少女は小さな紙切れになって声の主のもとへ舞い戻った。

公園に現れる霊を祓って欲しいと依頼を受けたが、対象が子どもだと少し胸が痛む。

祓い屋は砂地に書いた陣を足で丁寧に消すと夕焼けを背に歩き出した。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る