布団
近くの空き地で地鎮祭が始まった。
家へ帰るのにショートカットができて便利が良かったのだがこれも致し方あるまい。
帰る道すがら、その様子を横目で眺めていたが今まで雲ひとつなかった空がたちまち暗くなり大粒の雨が降り出した。
幾日も晴れが続きひび割れた土がみるみると水気を含み色を暗くする。
私は急いで家を目指した。
季節が変わり、くだんの空き地に立派なアパートが建った。
単身向けらしく小さく区切られた窓には色とりどりの洗濯物が風に吹かれひるがえる。
そして私は今日も洗濯物を横目で見ながら家路についた。
ある秋の日、不意の雨に慌てているとくだんのアパートの角部屋にじっとりと雨水を含んだ布団が干されていた。
かわいそうにと同情しつつ私も頭から爪先まで濡れた体で家路についた。
あれから3日たち、角部屋の布団は今日も同じ場所で空を仰いでいる。
やはり一度濡れた布団は使えないのだろうかと思いつつ家路についたが、先日の雨で私は風邪をこじらせ1週間ほど家にいた。
久しぶりにアパートの横を通ると角部屋が空き部屋になっていた。
天気も良く各部屋に色とりどりの洗濯物がひるがえる中、角部屋だけが寂しく感じられた。
秋も深まり冬の気配が忍び寄る頃、角部屋に真新しいカーテンがかけられていた。
新築なのですぐ埋まるのだろう、真新しいカーテンの色が眩しく映る窓を横目に家路についた。
年の瀬も押し迫り冬の陽の残光がまもなく訪れる闇をわずかに照らす中、角部屋のカーテンが揺れていた。
横目でちらりと確認したが、カーテン越しに感じる人の気配に慌てて目を逸らし家路についた。
年明け早々、アパートの前を通ると角部屋は再び空き部屋になっていた。
年の瀬に横目でちらりと見たあの時、周囲が暗くまた灯りもついてないのに感じた角部屋からの気配を空き部屋から同じように感じた私はなるべく気取られないようにアパートから離れた。
私は次の日から帰り道を変えた。
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