第3話 標的
No2
標的
葛城サナエと林田はレストランに入りウェイターの案内でテーブル席についた。
二人を席に案内した年若い青年のウェイターはレストランメニューを差し出し、二人に笑顔を向けて挨拶をした。
「ご来店、ありがとうごさいます。こちらが、本日のメニューになります。そして、こちらがドリンクメニューになります。お決まりになりましたらお呼び下さい」
ウェイターの青年は簡単な挨拶を済ませると一礼して下がっていく。
葛城サナエはウェイターの青年が下がると林田に話しかけた。
「林田さん。ここって、雑誌に紹介されていたレストランですよね? 確かうちの会社が編集担当してましたよね?」
「そうだね。以前、うちの会社でも取材をしたレストランだよ。その時の取材の編集を少し担当した事があってね。こうして、たまに顔を出して食事をしに来るんだよ」
「えっ? あの雑誌の編集を林田さんが担当していたんですか?......あと、食事しに来てるんですね....」
葛城サナエは林田の言葉に一喜一憂していた。
「食事はもちろん営業先での付き合いだよ。プライベートでは一人用の個室で食事をして帰るだけだから。サナエさんがどんな風に思っているかは分からないけど、誤解がないように言っておくよ」
「べ、別に誤解だなんて.....」
そう言って葛城サナエは手に持っていたメニューで顔を半分隠した。
「いや、すまなかったよ。こうしてサナエさんと一緒に居るのに余計な事を言ってしまって.....」
「いえっ。別に林田さんが謝る必要はないですからっ! あ、料理を頼みましょう。私は決めましたから、林田さんも決めてください」
葛城サナエは手に持っているメニューを林田に渡す。
「そうだね。せっかく二人で一緒に食事が出来るんだ。楽しい食事にしよう。なら、サナエさんはドリンクを選んでくれる?」
林田は手に持っているドリンクメニューを葛城サナエに渡した。
二人は互いに飲み物と料理を決めるとウェイターを呼んだ。
先ほどテーブル席に案内してくれた年若い青年が応対した。
「お決まりでしょうか?」
「僕はこの季節の野菜を使った料理を。メインはステーキで」
「私も同じもので、メインは魚でお願いします。それと、ドリンクは白ワインをグラスで。林田さんは?」
「僕は赤のグラスで」
「かしこまりました。しばし、ご歓談くださいませ」
ウェイターはオーダーを受けると下がっていった。
「ふふ、同じ料理を注文しましたね」
「そうだね。まさか一緒だとはね。どうしてその料理を選んだのかな?」
「私、野菜と魚が好きなんです。実家が農家なので小さい頃から新鮮な野菜を良く食べていて。魚も季節によって味も種類もたくさんあるから好きなんです。あっ、別にお肉も好きですよ」
「そうなんだね。僕も野菜は好きでね。良く食べるんだ。まぁ、魚も食べるんだけどやはり肉の方が好きかな」
そんな話をしてるとウェイターが白ワインと赤ワインのボトルを持ってきて、葛城サナエと林田のワイングラスに注ぐ。
「こちらの白ワインはフルーティーな香りと後味がスッキリした白ワインになります。そしてこちらが、芳醇な香りとしっかりとした重厚な味わいがある赤ワインになります。本日の料理に合うかと」
ウェイターの青年はそう説明して、笑顔と一言添えて離れていった。
そのあとすぐに料理の前菜がテーブルに用意され、葛城サナエと林田は料理とワインを楽しみながら食事をしていった。
##
葛城サナエと林田はレストランで食事を楽しむと駅のホームで電車を待つ。帰宅ラッシュの時間とは違い駅のホームにはそれほど人は多くなかった。
「林田さん、レストランの料理美味しかったです。それと、林田さんの事が聞けて良かったですっ!」
葛城サナエは、林田に笑顔を向けてそう言った。
「僕も今日の食事はいつもよりずっと楽しかったよ。サナエさんの事も聞けてよかったよ」
互いに微笑みを浮かべ見合わせながら話をする。
「どうかな? また、食事に誘っても迷惑ではないかな?」
「迷惑だなんてっ! また、誘ってください。今度は私がお店を紹介しますねっ」
「そう、良かったっ! なら、また時間がある時に」
そして、互いにプライベートの連絡先を交換してるとホーム電車が入ってきた。
「電車来たね。僕は方向が違うから」
「はい。見送ってくださってありがとうございます。また、会社で」
「帰りは気をつけて。また、会社で」
二人は軽い挨拶を済まして別れた。
##
林田は電車を見送ると携帯端末を取り出しどこかへ電話をかけた。
プルルップルルッ--
「--なんだ?」
数回のコール音のあとに低音な声をした男性が電話口に出た。
そんな相手に林田は端的に返答した。
「次が決まった。準備をしといてくれ。あとで資料を送る」
「ほぅ。了解だ。しっかりとヤレよ? 分け前は六割でいいな?」
「あぁ、それでいい--プツンッ」
林田は笑みを浮かべると自分が帰るホームへと向かった。
林田がいなくなると一人の青年がホームの支柱から現れた。
「次....ね。さてと、俺も帰りますか」
青年はホームに入ってきた電車に乗った。
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