第4話-海斗、目覚める
トラックに撥ねられても一日で治り、かつ治療費もタダということを知った俺は、異世界に転生するまで、トラックに轢かれ続けることにした、のだが…
「やっぱ痛いのはやだな」
轢かれライフを始め速三日、轢かれる=痛いというのを忘れたいたことに気付いた。
「流石にそれは問題だな…さてどうしたものか…」
にゃ〜お
「ん?ああ、おまえか」
轢かれる宣言をしてからというもの、どうもこの前助けた子猫がついてくる。それに、撥ねられる時、必ずと言っていいほど俺をジロジロ見てくるのだ。
「なんだ、俺を撥ねられるのが好きなMだとでも思ってるのか?」
まぁそんなはずないと思うが…って、ん?
「そうか、その手があったか!ありがとうな!おまえのおかげでいい案が浮かんだよ!」
子猫が首を傾げるのを尻目に、俺はある所へ向かうのだった…
ピンポーン
『はーい』
「峯岸ですけど、雪羽いますか?」
『あたしだけど』
「お前、今空いてるか?」
『うん、空いてるけど…なに?急に家まで来て。ついに告白しにきた?』
「それは来世になってもないから安心しろ。
取り敢えず上げてくれないか?」
『お母さんいるけどいいの?』
「それで何か問題があるのかよ。言っとくけどお前が考えてるようなことじゃないからな」
「それで?女の子の部屋にズカズカ上がって来て、なにを御所望?」
「…なぁ、雪羽。俺のことを…」
ここまできて少し恥ずかしくなってきてしまった。
「…なによ」
雪羽も少し頬を染めて恥ずかしそうにしている…
「罵ってみてくれないか?」
「……は?」
鳩が豆鉄砲をくらったような顔をされた。
「どういう風の吹き回し?いつの間に海くんMになったの?」
まぁ、普通はそうなるか。俺は得意げに自分の考察を教えた。
「医者曰くお前が依頼した治療のせいで撥ねられても治療費0でかつ一日で治るようになったんだとよ。つまり撥ねられまくれるわけだ。そして撥ねられまくればいずれ異世界転生できる。そう思ったのさ」
「すごい発想ね…そこまで行くと馬と鹿を通り越して石ころよ…それで?なんで罵ることになるわけ?」
俺はここぞとばかりに口角を上げてみせ、
「撥ねられても痛くないように、Mになればいいと思ったのさ」と言い放った。
「…ごめん、ちょっと頭痛くなって来た…
悪いけど今日は力になれそうにない…」
「そうか…まぁ急に押し掛けたのは俺の方だし大丈夫さ。というか俺の方こそすまんな。
じゃあ、またな」
「ええ、また明後日…」
「…明後日?ああそうか明後日から考査か…」
うちの学校は考査の前に一週間休みがある。
それが明後日で終わろうとしているのだ。
「つまり、今日試して明日寝るって感じか」
一度試すのに2日かかる。そう考えると、少し効率が悪い感じがするが、まぁ贅沢は言ってられない。折角ソシャゲの方も落ち着いた今、早いうちにMにならなくては。
佐咲のお母さんに挨拶して家を出た俺は、本屋に向かった。
「…!いらっしゃいませ、おn…いえ、なんでもありません」
本屋につくと椎名が出迎えてくれた。本屋で店員が出迎えるというのは珍しい気もするが、それ目当てでくる客もいるので、結果的にはいいのかもしれない。
「今日は新刊は出ていませんが…どうされたのですか?」
「いや、そういうわけじゃないんだけど…」
しまった!本屋に来たはいいものの流石に他の客もいる中でどう切り出せばいいのか考えてなかった!
「え、えと…そうだ!猫についての本とかで、オススメとかってない?」
最近絡みにくる子猫が咄嗟に浮かんだので出してみた。
「では、案内します」
このまま人気のない所に行けば話せるか?
「ちょっと待ってください確かこの棚に…」
お、ここなら人もいないし大丈夫かな。
でもそれにしても人が居なさすぎる。それも意図的に近づこうとしないような…
「あっありました。これです」
そして椎名が取り出した本をみると…
「…ケット・シー?」
「はい、アイルランドの伝説の猫の妖精です。
その本にはケット・シーについての伝承や童話、考察などが書いてあります」
見渡してみると、神話や伝説、オカルトの類の棚だった。オカルトチックな装飾も施されているので、誰も近づこうとしないのも納得できる。
「…椎名ってこういうのが好きなの?」
「はい、お恥ずかしながら」
すごく目をキラキラさせているのに、恥ずかしいことはないだろうと思いながら、本題に移ろうとするが…
「どうでしょう先輩。読んでみませんか?
他にも、ギリシア神話や、七つの大罪なども
あります。その中でも、私はやっぱり魔女とアルプについてのこの本がおすすめですよ」
いつになくテンションが高い…というか、こんなに楽しそうな椎名を見たのは初めてかもしれない。こんなに楽しそうなら読んでみようかな…じゃなくて、本題を言わないと。
「あー、えっと…今日は本を買いたくて来たんじゃないんだ。ちょっと椎名に話があってね」
「話…ですか。どうぞ、なんでも言ってください」
「えっと…椎名。俺を…罵ってください!」
「はい。分かりました。準備するので、少々お待ちください」
「いやわかるよ。そりゃ困惑する。佐咲だってそうだったしな。でも落ち着いて聞いてくれ。俺は別にMになったんじゃなくて…いや
返答速くね!?」
「大丈夫です。先輩が卑しい豚だということ
は前からわかっていましたので。でも仕事中に頼むようなことではありませんよね?これはお仕置きが必要だと思うのですが」
「…はい。椎名様…」
それから2時間。いつのまにか椎名の家に連れてこられた俺はというと…
「先輩、揺れないでください。コーヒーが溢れたらどうするつもりですか。イスならイスらしく。しっかりしていてください」
「はい!申し訳ございません!椎名様!」
しっかりMに目覚めていた。
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お久しぶりです。クロです。
投稿期間が割と空いてしまいました。すみません。この話、設定とか崩さない程度に好きなものを詰め込んでいるので、時間がかかってしまうんですよね。でもプロローグで書いた通り、週2〜4話というのは守ります。
どうも話の展開が浅いですね…まだ伏線段階だと思ってくれるとありがたいです。
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異世界転生したい俺は何度でもトラックに轢かれる 漆黒のシュヴァルツブラック @rgz95rezel
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