第19話

「ダイアンさんとは昔から仲が良かったんですか?」

歩きながら俺は彼女に話を振った。

「ええ、幼馴染だったものですから。彼は若い頃から物知りで勇敢で素敵な方でしたよ」

「そうだったんですね。ダイアンさん今もかっこいいからなぁ」

俺がそう言うと彼女はふふと笑い、メリアは少し恥ずかしそうに目をそらしていた。

「よく二人でお茶したりしましたね。その時によく薬学の話とかしてくれたり、色々教えてもらいました。私の将来のこととかも本当に親身になって聞いてくれましたね」

「恋仲だったんですか?」

「いえいえ、とんでもない。あの人凄くモテてましたから」

「ちょっと、ユウサク何変なこと聞いてんの?」

メリアが溜息交じりにそう言った。また余計なことを言ってしまったようだ。

「それもそうだな、すみません」

「いえいえ、ユウサクさん面白い方ですね、ふふふ。そういえば、あなたのお名前伺っていなかったですね」

彼女はメリアに話を振った。

「私はメリアと言います」

「メリアさんですね、私はアナスタシアです。ごめんなさい、長年薬草店にはお世話になっているのにお店の方々にはちゃんと挨拶していなかったものですから」

「いえいえ、とんでもないです。父のダイアンから、お名前だけは伺っていました」

メリアがそう言うと彼女は目を丸くした。

「まあ、あなたダイアンさんの娘さんだったんですね。ごめんなさい、あの人がご結婚なされていることは知っていたんですが、娘さんについては知らされていなかったもので。確かになんだかあの人に似た知的な面影があるなとは思っていたんですが、まさか娘さんだったなんて。そっかぁ、そうですよね、あの人なら娘さんがいてもおかしくないですものね」

彼女はそう言って物思いに耽るように空を見上げた。その表情はどこか嬉しそうでどこかもの悲しそうにも見えた。

きっとダイアンさんも彼女のことを思って、あまり私生活については教えていなかったのだろう。

「でもダイアンさんもほんと幸せ者ですよね。自分の好きな話を聞いてくれる女性がいるんですから。あの人自身も家庭を持っているのは事実ですけど、きっとあなたのことをどこか心の支えにしていると思いますよ。そういえばさっきもアナスタシアさんのことを少し気に掛けていましたし」

俺の話を聞き、彼女は少しほっとしたような表情を浮かべた。

「そうですか、それなら少し良かったです。あの人には迷惑ばかりかけているなと思っていたので。そう思っていただけているなら本望ですね」

俺の話を聞き彼女は笑みをこぼした。表情が明るくなったようで何よりだ。

そんなこんなで談笑しながら歩いているとそろそろ薬草店に近づいてきた。ふと薬草店の方を見るとドアの前に立っている見ず知らずの男が見えた。

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