第16話

「さてと、たしかここら辺に初心者用の薬草書あったような、これだな?」

書斎に忍び込んだ俺は棚の上の方に手を伸ばし、ダイアンさんの言っていた初心者用の薬草書を取り出し、クラーケンのページを開いた。薬草書は大抵言葉が難しくて読めないんだが、これは絵が沢山描いてあるので確かに俺でも読みやすい。

「クラーケンのページ結構書いてあるなあ。なるほど、粘膜はコラーゲンたっぷりでお肌に良いのか、これはペリーヌさんが喜びそうなページだな」

俺はページの概略を把握しつつ読み進めていった。すると、俺はクラーケンの頭部を説明するページの中に奇妙な項目を発見した。

「クラーケンの眼については指定危険物ページを参照か、なんか怪しいな」

不安と興味に駆られるまま、俺はページをめくった。

「クラーケンの眼、効能は老化抑制、副作用は急激な体内組織の衰弱。飲むと効能は一年間続き、その間肌の老化が抑まるが、体内のエネルギー物質が肌に集中するため体に大きな負担を強いる。寿命を大きく縮めるため、継続的な摂取は非常に危険、か、、、」

俺はこの項目を読んで戦慄した。あの女性がこんなにも危険な薬を飲んでいたこと、そしてあの女性の美しさが薬によるものであったことに気づいたからだ。

俺は上からの辞書を取り出し、読み違いがないか調べた。だが、俺の読みに間違いはなさそうだった。俺は薬草辞書をもう一度読み直した。だがやはり確認漏れもない。

俺は辞書と薬草辞典を閉じ、俯いて考えた。よくよく考えたらあの女性はダイアンさんの昔から知人にしては若すぎる見た目だった。しかし、一体なぜあの人はこんなにも危険な薬を飲んでいるんだろう?女性ってそこまでして自分の美を求めたいのか?確かにあの人は見るからにお金持ちそうだったし、自分の美を保つのに十分な財力はあるだろう。だが金には問題がないとしても、この薬は命にかかわる。明らかに代償が重すぎる。

「何調べてるの?」

そんなことを考えているとメリアが本を整理しながら俺に話しかけてきた。

「おお、メリア。いやちょっとある薬が気になってな。メリアはダイアンさんの知り合いのこととか何か知ってるか?」

「よくわかんない、パパあんまそのこと教えてくれないから」

ダイアンさん、メリアにもあんま話してないのか。まあ、そもそもメリアは特に興味なさそうだ。

「そっか、それなら大丈夫だ」

「じゃあ、ちょっと手伝ってほしいことがあるんだけどいい?」

「ああ、どうしたんだ?」

「パパからのお使い手伝ってくれる?私、その、あんまり重い物もてないから」

メリアは少し照れながらそう言った。

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