第15話
昼時が近づくといつも通り客数が減っていった。ペリーヌさん一人で事足りるようだったので、俺は薬草茶でも飲んで一息つこうと考え薬品室に戻ることにした。
すると中では既に女性との対話を済ませたダイアンさんが一息ついている様子だった。
「ダイアンさんお疲れ様です。俺もお茶もらっていいですか?」
「ああ」
そう言ってダイアンさんは俺にそっと急須を渡した。なんだか項垂れているようにも見える。
「なんかお客さん大変だったんですか?」
「まあ、ちょっとな。気にしなくていいよ、俺の私的なことさ。ちょっとタバコ吸ってくるわ」
気まずくなったのかそう言ってダイアンさんは机を離れた。あの女性のことを少し聞こうと思ったがどうもそんなことができる雰囲気ではなかった。
俺は目線をダイアンさんから机に戻すと、ダイアンさんが忘れていったらしい瓶が机に置いてあるのが目に付いた。
「ん、なんだこれ、なんかキモいな」
その中には薬草に大きな眼が混じって入っていた。写〇眼のような変わった赤色の文様の瞳孔を持つ巨大な球体であり、なんだかこちらをのぞき込んでいるようにも見える。気持ち悪いのは確かだが、ついつい怖いもの見たさで見入ってしまう。というかよく見たらなんだかどこかで見たような目だ。
「あ、これさっきのクラーケンの目じゃないか?」
俺は箱から突然飛び出し襲ってきたあいつを思い出した。間違いない、あいつの目と全く同じだ。だいぶ長く触手で掴まれ睨み付けられていたので容易に思い出せた。
しかし朝冷凍庫に入れたクラーケンがもう薬に調合されているとは。きっと、ダイアンさんが誰かのために急ぎで作った薬なのだろう。ダイアンさん今日はまだあの女性としか話していないはずだし、とするとこれはあの女性のための薬か?よく見たら瓶にもお客さん用と書いてあるし。
そんなことを考えていると、ダイアンさんがタバコから急ぎ足で戻ってきた。
「やばいやばい、薬を忘れてきちまった。あったあった、悪いな気味悪かっただろ?」
「いや、大丈夫です。そんな見てないですし」
「そうか、ならよかった。大事な薬なんで一応触らないようにな」
「了解で~す」
ちょっと焦った表情をするダイアンさん。なんだか裏がありそうだな。
俺はダイアンさんが部屋を出ていった頃を見計らって、クラーケンについて調べるべく書斎にこっそりと忍び込んだ。
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