第14話

「ダイアンさんですね、分かりました、呼んできますので少々お待ち下さい」

俺は普段通りの笑顔で彼女に返答したのち、薬品室に戻りダイアンさんに声を掛けた。

「ダイアンさん、受付で女性の方が呼んでます」

「ああ、もういらしたのか。わかったすぐに用意をするからテーブルのある椅子に座って待つように言っといてくれ」

やはりどうやら知り合いの様だ。

俺はまた受付に戻りその旨を彼女に伝えた。

「取込み中のようですので、あちらのテーブルに腰掛けてお待ち下さい。すぐに参りますので」

「わかりました、ありがとうございます」

そう言って彼女は嫣然とした様子で受付を離れた。

それにしても艶のかかった頬に絢爛な服装、風貌が明らかにほかの客よりも目立っている。一体ダイアンさんどのような繋がりなのだろうか。奥さんにしては若すぎる気がするし、親戚とかだろうか。それにしてはだいぶお金持ちみたいだが。

「なんだユウサク、お前もあの人のこと気になってんのか?」

突然後ろから声がしたので振り向くと、薬草士のセージが後ろにいた。

「うおう、お前調合室にいたんじゃないのかよ」

「こっちの方が忙しそうだったんでね。あの人、毎年この時期にここに来る常連さんだよ。ダイアンさんの昔からの知り合いらしくてね、いやぁいつ見てもきれいだ」

セージはメリアの調合補助としてよくこの店にきている。わかっての通り、美人を見る目に関して抜かりがない男だ。

「お前美人さん大好きだな」

「ああ、しかもあんなきれいな人妻そうそういない。お前も本当は気になってたんだろ?」

「いあまあちょっとだけな。てか、毎年来るって言ったけど、あの人なんか重い病気でもあるのか?」

「俺もよくわからん。あの人の薬だけはダイアンさんが個人で調合しているからな。でもまあ毎年くるってことはそういうことなんだろう。美女薄命ってやつだな

誰も知らないとは、謎は深まるばかりだ。

まあ、あんまりお客さんのことを詮索し過ぎるのはよくないよな。ダイアンさんが誰にも話さないってことはかなりプライベートなことなんだろうし。

「32番なんですがまだ呼ばれませんかね?」

「すみません、今対応いたします!お待たせしました!」

俺はすっかり忘れていた受付の仕事に取り掛かった。


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