美貌
第12話
「ダイアンさん、この箱中に持って行っちゃっていいですか」
「ああ、よろしく頼むよ。赤い箱だけは別で慎重に持って行ってくれ、繊細なんでね」
薬草店の店長であるダイアンさんに呼ばれ、俺はトラックの品出しを手伝っていた。
「了解です、いやぁ今週もめっちゃ多いですね」
「ははは、うちの店は色んな薬品が行ったり来たりするからな。出る量も多ければ、入ってくる量が多いのも当然さ」
この店はダイアンさんが自身の広い人脈によって薬品を収集することによって成り立っており、ダイアンさんはこうして月一でトラックに大量に薬品を積んで店にやって来る。そしてそれを整理したり、棚に分けたりするのも俺達手伝い係の仕事というわけだ。最も俺はまだ薬の区分を覚えきれていないので、店内に運ぶくらいしか出来ないんだが。
「ほんとこんな量の薬品どこから仕入れて来るんですか、毎月」
「薬草士の仕事で出来た人脈のおかげさ。まあ俺も伊達に30数年仕事してるわけじゃないからな。ずっと真面目に仕事続けてたらそこそこの人脈は出来るもんよ」
にしても毎月トラックがパンパンになるくらい持ってくるわけだから、感心するばかりだ。
「そこら辺の薬は判別が難しいから、俺とメリアで何とかする。トラックの荷物全部持っていき終わったら、さっき持って行ったやつを出来る限り分類しておいてくれ」
ちなみにダイアンさんとメリアは親子だ。
「了解です。分け方は植物、動物由来の物、菌類でいいんですよね?」
「ああ、そうだ。少しは覚えてきたみたいだな」
「俺も何とか一年働いてきましたし前よりは分かってる気がしますよ」
最初期の頃なんか文字がなんも読めなかったから、解読作業から始めなきゃいけなかったわけで、それと比べたら随分とマシになったように思える。大まかな薬品の知識は身についたし、主要な薬品はどこにあるかすぐにわかるようになってきている。
「さてと、この赤い箱で荷物は終わりですね」
「あ、それはやはり俺が持っていこう」
「いいですよそんな重くなさそうですし、持っていきます」
「そうか、ゆっくりでいいからな」
俺は箱を持ち上げ店の中に入る。一体これ何の箱なんだろうか。もしかして、ダイアンさんが秘密に買った見られたくないものとか?
俺は歩きながら興味本位で箱を少し揺らしてみた。
「音はあんましないな。本とかでもなさそうだし、ん?うわあああ!!!!!」
俺は動転して尻餅をついた。
箱をぶち破り、中からなんとも巨大なクラーケンが出てきたのである。
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