第4話
「すみませんお待たせしちゃって。問診を担当させて頂きますユウサクです。薬草茶お持ちしましたので良かったら召し上がってください」
「ありがとうございます、よろしくお願いいたします。ジョージというものです」
「がたい良いですね、もしかして戦士とかですか?」
「昔はまあそんな感じでしたね。今はちょっと狩りには行けてないんですが」
男は苦笑いを浮かべてそういった。
戦士というと、大体自分の職業を誇りに思ってそのことを強くアピールするものだが、この人は随分と物腰柔らかだ。それに戦士なのに狩りをしていないとは不思議だ。戦士を育成するトレーナーのような感じだろうか。
俺は初めての問診に緊張しながらも、なんとかそのそぶりを出さないよう努めた。
「なるほどなるほど、あ、お茶飲みながらで大丈夫ですよ」
「ありがとうございます。うん、香りがとてもいいですね、美味しい。薬草茶好きなんですよ」
「よかった、苦めだからお気に召さなかったらどうしようかと思ってましたよ」
「いえいえとんでもないです。こういう広い場所で一息つくの本当にいいですよね」
男はそう言って明るく微笑んだ。人柄の良さがそのまま表情に出ている。
「そうですね、、、」
話につまり、沈黙が続く。俺は辺りを見渡すような振りをしながら話を切り出すタイミングを見計らっていた。
「問診の続きですよね?」
すると相手のほうから先に提案されてしまった。
「ああ、そうですねすっかり忘れてました。すみません、こういう仕事初めてでちょっと不慣れなんですよ」
気まずくなるのを避けるために、俺は正直に打ち明けることにした。
「ふふふ、なるほど」
男は再び笑顔を浮かべた。軽いアイスブレイクになったようだ。
「じゃあまずカルテの初めのほうから進めていきますね。今回のご要望を教えていただけますか?」
そう言うと男は少しため息をついてこう言った
「実は、どうしても消したい記憶があるんです」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます