スタジオ31 超絶人気アイドルが俺を追うのは愛しているからに違いない

 山吹さくらのワンマンライブまであと20日。

 ばあじの活動が静かにスタートした。

 連日のライブ出演だ。

 渋谷という好立地にもかかわらず、客足は鈍い。

 さくらのご機嫌はほぼ水平というほど斜めだった。


「世界を滅ぼしてやろうかって思うわ」


 山吹さくらのソロライブは20万枚が5分で完売。

 その1枚分にも満たないばあじの売上に落胆する気持ちも分かる。

 だからと言って、ファンをなえがしろにするのは良くない。


「そんなこと言うもんじゃないよ」

「けど、特典会の参加者が7人って、しょぼすぎる」


「だったらその7人のために全力を出そう」

「……分かったわよ。その代わり……。」


 さくらは何か言いたそうにしている。

 俺は、さくらに正面から向き合って言った。


「なんだい。遠慮せずに言ってごらん」

「……今夜も、フランクゲームがしたい……。」


 俺には、断ることができなかった。

 また泥のようになる覚悟を決めた。

 代わりにさくらに1週間洗濯当番を押し付けたのは、単なる偶然。




 洗濯当番の最終日、さくらが言った。


「坂本くん、こっちをはきなよ!」


 そう言って、俺に真新しいブリーフを差し出した。


「プレゼントだよっ!」


 素直にうれしい。

 下着を贈られるなんて相当に深い仲だもの。

 でも、なぜか俺は、いつものパンツの方が良かった。

 自分で買った覚えも、人に貰った記憶もないパンツ。

 どういうわけか、俺にとってはお気に入りだった。

 俺は、ズボンを脱いで言った。


「うれしいけど、やっぱ俺、こっちがいい」

「まっ、まだそんなのはいてんの!」


 そんなのってことはないだろうに。


「こっちの方が、300円も高かったのにぃ!」


 さくらがパンツの値段に詳しいのを、はじめて知った。

 俺は、笑ってごまかした。




 ばあじにも固定ファンができた。

 その中に双子の姉妹らしき2人がいた。

 金髪と銀髪。白い肌。くっきりした目鼻立ち。

 日本人ではなさそうだ。


 2人は連日ばあじのライブに参戦。

 そういうのによく気付くのは、まりなさんとあの子さん。

 俺はばあじの3人と一緒に舞台の袖から2人を覗いてみた。

 さくらの様子がおかしくなったのは、そのときから。


「わぁっ。またあの2人が来てくれたわ」

「本当だ! これでもう5日連続じゃない」

「どれどれ……。」


 さくらはそう言ったきり固まった。

 その目は、危険なモノを見る目のようにも思える。

 俺は改めてさくらの視線の先を見た。

 そこには当然、件の2人がいた。


「ん? 随分と華奢だなぁ」


 痩せすぎかよってくらい。

 まりなさんやあの子さんとは大違い。

 強いて言えばさくらに近いが、さくらよりおっぱいも小さい。

 ふと思うのは、結局俺の好みはさくらなんだってこと。

 手も脚も細くて長い。大きくくびれたヘソ周り。

 ちっさい顔。おっきいおっぱい。堪らない。

 考えただけでよだれが出る。


「間違いなく、バレリーナね」


 割り込んできたのは、社長だった。

 俺は慌ててよだれを拭いた。

 続けて明菜さんとまりこちゃん。


「こんなところにいるなんて、アイドルに興味あるんじゃない?」

「うんうん。だったらスカウトしちゃいましょうよ」


 ほんの軽い気持ちだった。

 固まっていたさくらを除く6人で決めた。

 で、声をかけるのは俺ってことになった。




 相手は金髪と銀髪、白い肌。くっきりした目鼻立ち。

 日本語が通じるかどうかも分からない。

 2人はトイレにでも行くのか、客室を出てフロントに移動。

 そこで俺は、意を決して2人にはなしかけた。


「こんばんは。ちょっとおはなしだけでもどうでしょうか」


 2人はまず、身体を大きくのけ反らせた。

 そのあとで互いに顔を見合わせた。

 完全に俺のことを警戒していた。重苦しい空気。

 でも、日本語がちゃんと通じるみたい。


 俺には、雰囲気を和ませる話術なんかない。

 代わりに率直に、あくまで事務的に続けた。


「毎日いらしてるので、もしアイドルに興味あるならと……。」


 と、そのとき……。


「……ダメ! その子たちは危険!」


 そう言って大声ではなしに割り込んできたのは、山吹さくら。

 まだ大分離れている。

 今まで固まっていたのが嘘のように機敏。

 今日はこれまで、自力で山吹ってなかったな。


「坂本くん、近付いたら絶対にダメ!」


 めっちゃかわいいけど、めっちゃ怒り顔だ。

 俺にどんどん近付いてくる。

 コツコツという靴の音が速い。

 ここはさくらのいう通りにした方が良さそう。

 俺はそっとその場を離れようとした。




 ところが……。




「貴方が坂本くん!」

「ずっと会いたかったわ!」

「えっ?」


 2人は俺を左右から捕まえた。

 二の腕が絡み合い、その柔らかさが直に俺に伝わった。

 でも、おっぱいが小さいから感触はそれだけ。

 俺にとっては物足りない。


「こっちへ来てちょうだい」

「大丈夫。痛くしないから」


 2人は言うなり駆け出した。

 俺は引き摺られるようにしてついて行った。

 というか、拉致られた。


 建物の外に出た。

 尚も走り続ける2人。引き摺られる俺。

 ほどなくさくらも出てきて、左右を確認していた。


「さくら、こっちだ!」


 俺が呼ぶと、さくらは猛ダッシュして追ってきた。

 超絶人気アイドルが俺を追うのは愛しているからに違いない。


「坂本くん! 2人とも待ちなさい」


 これで大丈夫だろう。

 山吹っているさくらが追いかけているんだから。

 それはそれは、猛スピードで。

 さくらより足の速い人なんかいない。




 ところが、一向に追いつかない。

 2人の足がそれほど速いってことだ。

 それだけで2人が普通じゃないのが分かる。

 さくらが警戒していたのは、こういうことなんだろう。


「さっ、坂本くん! 待って……。」


 さくらが言った。俺には変わって見えない。

 でも、走る勢いから察するに、山吹っていないのだろう。

 どんどん差が開き、やがて見えなくなった。

 完全にはぐれてしまった。




 俺は普通のホテルの一室に連れ込まれた。


「私、チェルシー。こっちはリース」


 さらに2人は俺を拉致した目的を明かした。


「私たちは貴方とエッチがしたいだけなの」


 だけって、何だよ。

 さくらとだってまだなのに。


「冗談。俺は貧乳とはしない!」


 うそぶく俺。顔を見合わせる2人。


「分かったわ。これでどう?」


 言うなり、2人は手を繋いだ。

 すると……。


 2人が光を纏いはじめた。

 その光はどんどん大きくなった。

 そして、俺さえも包み込んだ。


 眩しくないのが不思議とは思わなかった。

 魔法少女が変身するときみたいな、ド派手なエフェクト。

 ただし、現実のことだ。


 摩訶不思議な体験。極め付けは、2人の変化。




 おっぱいがどんどんおっきくなっていった。

 胸の辺りをとめていたボタンが弾け飛んだ。

 俺の額にジャストミート!

 思わぬ攻撃にさらされ、幸せだなって思った。


 光が止んだ。

 2人はささっと服を脱いだ。ブラジャーも、パンティも。


 金も銀も、髪の毛だけじゃないんだってことを知った。

 2人とも、とてもきれいだ。

 何の不満もない。


「さぁ、これでどう?」

「私たちのこと、貴方の好きにして良いのよ」


 2人は言いながら、おっぱいを両手で支える。大迫力だ。

 肩幅があるからだろうか、さくらのよりもさらにデカい。

 もみたい! すっごくもみたい。顔を埋めたい。


「じゃあ、遠慮なく!」


 俺は、ずっと楽しんだ。




「もう、いいでしょう。おっぱいでばかり遊んでないで」

「そろそろ、エッチしてちょうだい」


 2人が懇願してきた。

 折角おっぱい三昧を楽しんでいたのに。興醒めだ。

 腹いせに言ってやった。


「じゃあ、さくらを連れてきて!」


 顔を見合わせる2人。

 俺は、無慈悲に続けた。


「俺、さくらの前じゃなきゃパンツ脱がないから」




「仕方ないわね……。」

「……あまり手荒なことはしたくなかった」


 このあと、俺は2人に奴隷化された。

 それでも、パンツだけは脱がなかった。

 おかげで数日後には、カピカピになって異臭を放っていた。


======== キ リ ト リ ========


えっと、トイレはどうしてたかっていうとですね……。

ちゃんと下ろしてやってたみたいです、はい。


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