ステージ17 進撃の坂本!

 とんでもないことを言い出した。坂本くん。


「やっ、やりませんからっ!」


 信じられない! 何様のつもり?

 やりたいのかやりたくないのか、分からない。

 私のこと好きなのか嫌いなのか、分からない。

 好きでいてくれなくても、せめて応援くらいしてほしいのに。


「ちょっと、それ、どういうこと?」


 私は、感情的になっていた。


 いつもならしばらく様子を伺ってから対処する案件。

 なのに、口から先に出てしまった。


 多分それは、売り言葉に買い言葉ってやつ。

 売った私が悪いんだけど。


「山吹さくらじゃ、イヤなんだ!」


 やっぱりショックだよ。認めたくないよ。

 坂本くんは特別だって思ってたのに。


「どうして? さくらおっぱい、揉みたいんでしょう!」

「揉みたい。すごく揉みたい」


 わけわかんない。揉みたいのに、キスはダメってこと?

 けどキスしなきゃ、私は山吹らない。


 坂本くんの我儘! 許さない!


 私はキスをした。坂本くんは全く抵抗しなかった。


「坂本くんっ、揉んでっ!」

「うん。揉むよっ!」


 キスのあと。坂本くん、何かが変。思ってたのと違った。


「えっ?」

「揉みたいだけ、揉ませてもらうよ!」


 ちょっと、何なのよ。私は身体をのけぞらせた。そして逃げた。

 至近距離でさくらスマイルを見て、立たせもせずに立っている坂本くん。

 異常だよ。違う。いつもの坂本くんじゃない! まるで別人。


 追ってくる! 坂本くんの進撃は止まらない。

 イヤ。それはない。私は、逃げていた。


「ちょっと、やめてよ!」

「どうして、揉んでって言ったじゃん」


 確かに言ったけど、それは違う。


「これ以上近付いたら……。」

「近付かなきゃ、揉めないじゃん!」


 さらに間を詰めてきた。怖い!

 こうなったら、実力行使!


「もーうっ! えいっ!」


 坂本くんを私は坂本くんを投げ飛ばした。手加減なし。

 本気で投げた。坂本くんは真っ直ぐに飛んだ。


 その距離、10m以上。桜庭先輩の倍は飛んだ。死んでもおかしくない。


 けど、坂本くんは立ち上がった。そんなに強靭だったっけ。


「さっ、坂本くん……さくらん……。」

「2人とも、どうしたの?」


 私たちの様子にびびったまりなさんとあの子さんが言った。

 そのとき、私は佐倉に戻った。


「佐倉、もう1回キスだ!」

「イヤよ。イヤイヤ! 今日の坂本くん、おかしい!」


 坂本くんに背を向け、小さく蹲った。身体は小刻みに震えていた。


「さぁ、佐倉。大人しくしてるんだ!」

「………………。」


 坂本くんの手が、私の肩を握った。痛い!

 私の気持ちなんか無視して突き進もうとする坂本くん。


 どうして、こんなことするの?

 私は、穏やかでいて頼り甲斐のある坂本くんが好き。


 けど、今の坂本くんは苛烈過ぎ。


 そのとき、坂本くんの背を社長が襲った。

 坂本くんはばたりと音を立てて倒れ、気を失った。


「サクラ、怪我はない?」

「はっはははいっ!」


 声が震えた。


「3人ともとりあえずここを離れなさい」


 社長は、坂本くんをロープのようなものでぐるぐるまきにしながら言った。

 私たちは部屋をあとにした。


===================


「さくらん……。」

「……。」


 まりなさんとあの子さんが私に気を遣っているのが分かった。

 本当は、2人にとっても大切な日のはず。

 アイドルとして再起することを決めた日なんだから。


「2人とも、おかしなことに巻き込んじゃったみたい。ごめんなさい」


 気を遣われるのもイヤだった。だからそう言った。


「さくらん。私ね、坂本くんに勇気もらったの!」

「奇遇です。私もです」

「そうなんだ。どうして?」


 2人の話を聞いていると、坂本くんのすごさが浮き彫りになった。


「坂本くんには、やりたいことをやらせてくれる何かがあると思うの!」

「そうなのです。私は、まだアイドルをやりたい。さくら様と共演したい!」

「2人とも……。」


 ふと、思った。私もアイドルになりたい。

 それは、山吹さくらとしてではなく、佐倉菜花として。


 そして、お母さんに会いたい。

 有名になれば、きっと名乗り出てくれると思う!


「……私も、アイドルになりたい!」


 私の心は決まった。


 絶対に、アイドルになる。

 絶対に、お母さんを見つける。

 絶対に、坂本くん……。


 これが、私の夢。私の目標。


 これが…………私。


======== キ リ ト リ ========


ここから先、坂本くんより先に、佐倉の心が決まります。


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