スタジオ18 ロールケーキ
社長が俺に言った。
「坂本様って、まさか『坂本本舗』の関係者?」
「あっ、鋭いですね。俺、坂本二徹の内孫なんです」
様は良くないよ……。俺、偉くないんだから。
「やはり、そうでしたか。是非、私のおっぱいを揉んでください!」
「おっ、俺にはそんな能力、備わっていませんからっ!」
社長、相当なロールケーキマニアだったみたい。じいちゃんのこと知ってるし。
俺のじいちゃんこと坂本二徹は、ちょっと変わっている。
贈答用のロールケーキを作る際、ある儀式を行うんだ。
社長はその儀式の内容を知っていた。
「そう遠慮なさらず、ささ、どうぞどうぞ!」
「間に合ってますから!」
俺が断っても、社長は俺におっぱいを押し付けてきた。
おっぱいを揉むのは、じいちゃん固有の儀式なのに……。
おじいちゃん曰く、おっぱいを揉めばその子の好みが分かる。
どれくらいの甘さを好むか、付け合わせは何がいいか、全部理解する。
ちなみに、俺にはさっぱり。
社長は目にハートを宿した代わりに、語気を強めて言った。
「何故ですか? お孫様は、サクラにしか興味がないんですか?」
「……。」
「40過ぎたら、ダメですか? ダメじゃないですよね!」
「……。」
「揉んでくれなきゃ、殴りますよ! あと、事務所を出禁にします」
「……。」
「揉んでくれたら、所属アイドルのおっぱいも揉み放題にします!」
「わっ、分かりました。そうまで仰るなら!」
俺は、正直なんだ。所属アイドルには、さくらも含まれるから。
俺は、安請け合いしてしまった。このままではいけない。
俺には、おっぱいを揉んで相手を理解する能力なんてない。
社長の性格からすると、あとでバレたら大変なことになりそう。
俺は、意を決して正直にはなした。
「でも俺、おっぱいじゃ何も感じないですよ」
「え? 出来損ない?」
カチンときた。社長とはいえいきなりそれはない。
意地悪したくもなる。
こうなったら、思いっきり揉んでやる。そして適当に作ってやる!
「仕方ないですね。そうまで言われたら、本気出すしかありませんね!」
「坂本様♡」
またハート。
40過ぎのおっぱいは、俺にとっても未体験ゾーン。
俺は、そーっと社長を脱がした。
露わとなったおっぱいは、ぴっかぴかだった。まさに妙齢。
適当な感想を言った。
「なるほど。卵黄多めが好みですね!」
「せっ、正解♡」
卵黄多めが好みというのは、じいちゃんが1番よく言うセリフ。
大抵の人は正解!
俺は、調子に乗ってさらに社長のおっぱいを揉んだ。
そしてまた、揉んだ。やわらかくて、弾力があって、気持ちいい。
これは、男をダメにするおっぱいじゃないか!
「ふむふむ。なるほど、なるほど」
「…………♡」
何も分からない。けど、何か伝えないと。
社長といえば……。えーと、えーと、えーっと。
キリリとした表情。口数の少なさ。的確な指摘。
怒ると怖い。行動力。決断力。妙齢。そして……。
最後に俺は、社長が甘いもの好きなのを思い出した。だから、あえて言った。
「社長を未体験ゾーンにご招待します!」
「お招きいただき、光栄です♡」
社長のハートはそろそろキツい。いい加減、普通にしてほしい。
その気配は全くないが。
少しはしょっぱい思いをしてもらわないと。
「貴女にぴったりのロールケーキは、塩・ミソ・しょうゆです!」
「ラーメンかよっ♡♡」
3種類の袋メンを開封。粉末スープだけを取り出した。
早速俺は、新たにロールケーキを作った。
卵黄に砂糖とスープの粉ほんの1つまみを入れた。
生クリームを泡立てた。焼いた。巻いた。
「できた!」
「おいしそう! じゅるるっ♡♡」
会心のできばえ。自分でもびっくりだ。
ただし、味は保証しない。
社長はこの日3本目のロールケーキを食べた。
どうだ? 感想が聞きたい。
「どうですか、お味は……。」
「♡♡♡♡♡」
食べてくれるだけでもうれしいし、♡もうれしいけど、感想が聞きたい……。
結局社長は、感想をひとことも言ってくれなかった。
まぁ、いい。俺にとってはロールケーキなんておまけなんだから。
「昔を思い出すわ……♡」
「えっ?」
感想の代わりに社長が喋ったのは、社長の昔話だった。
社長の過去。かいつまんでいうと、アイドルだったらしい。
当時は大変な人気だったらしい。
それでも起業するだけの資金と人脈を得た。
「私は、全てを手に入れるはずだったのに……♡」
「で、ロールケーキはどうでした?」
社長のいう全てというのは、全ての男性の愛情という意味らしい。
それができなかったのは、社長の選択ミス。
つまり、多くのファンより1人を選んでしまった。
その相手とは1度は結ばれたが、10年以上前に別れたらしい。
人の愛は永遠ではないんだ。
「それが、サクラの父親なの♡」
「えっ!」
======== キ リ ト リ ========
社長、それは事件ですよ!
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