ステージ15 エステ②
今度はあゆまりさんまでしゃしゃり出てきた。
「さくらん、私もしたのよ。坂本くんと。歩きながら!」
この2人、私の坂本くんと、したの?
「あっ、歩きながらって……サイテーっ!」
「えっ、何したっけ。俺たちって、何したんだっけーっ!」
「坂本くんって、あほなのね。こうやって肌を合わせたじゃない!」
「私もこうやって歩いたわっ!」
坂本くん、2人がかりの羽交い締めをされているみたいになった。
たわわなおっぱいに。
これが、2人が坂本くんとしたことなの?
「なっ、なるほどーっ! 坂本くん、いいなーっ!」
いい年して、おままごとみたいなことに、こんなにはしゃぐもの?
「どう? さくらん。こういうのも、いいものよっ!」
「奇遇です。前の事務所では男性に触れることさえ禁止されていたので新鮮!」
バカあほコンビが、うれしそうに言った。
坂本くんが私を見た。明らかに私に助けを求めてる。
素直に助けるほど、私はお人好しじゃない。
「腕をホールドするなんて、私もやってみたいわーっ!」
どう? この煽り。2人には効いてるみたいだけど。
「ダメよ。ここは私の指定席にするからっ!」
「奇遇です。私もここがお気に入りなんです」
「そうですか。じゃあ、私も指定席に収まるわっ!」
「さっ、佐倉。辞めろぉーっ! こんな体勢じゃ……。」
坂本くん、ごめん!
私は私の指定席、坂本くんの唇を奪った。
「さくらん。さすがねーっ!」
「あーっ! 私も私もーっ!」
2人とも驚いていた。
これが、現役JKの実力。思い知ったか!
キスのあと。
あの子さんが驚かなかったはずはない。
私が山吹ったんだから。
「あっ、えっえーあっあっ、あわわわわわわーっ!」
「……。」
坂本くんは悶絶した。今のうちに。
今度は、2人にお仕置き!
「あの子さん、これからよろしく。一緒にライブしよう!」
「はいっ!」
「それから2人とも、私の前では坂本くんに触れるの禁止だよっ!」
「はいっ!」
「はいっ!」
「あと、坂本くんとのキスは、絶対に、ダメ! ビジネスでもダメだからねっ!」
「はいっ!」
「はいっ!」
こうして3人で新ユニットを結成しようってことになった。
新ユニットのメンバーは、まりなさん、あの子さん、そして山吹った私。
バカとあほと派手。
社長が、難癖つけて大大大反対。
「バカとあほ。お前らさくらの商品価値が分かってるのか?」
大剣幕。
まりなさんとあの子さんが怯んだのは言うまでもない。
「はっ、はいっ。申し訳ありません……。」
「つい、はしゃいでしまいました……。」
2人は土下座の勢いだった。
社長は怖いから、無理もない。
ただ独り、私は立ち向かった。
もう山吹っていないのに、社長に対して全く怯まなかった。
「社長、お願いです。私、ライブに出たいっ!」
「サクラ! こんなところで足踏みか?」
社長も負けてない。食い気味に一喝した。
「うっ……。」
新ユニットを結成してもしなくても、多分、私はライブができる。
ひじり84があるから。
ソロでの活躍だって可能だろう。
でも、そのためには社長や坂本くんの支援が必要。
「今月末、生誕ライブで山吹さくらはソロデビューする」
社長が言った。その一言に、私の目はハートになった。
サウンズ グー! ってやつだ。
ソロデビュー。甘美な響き。
「ライブは単独。ひじりメンバーも客席だ」
山吹さくらが単独ライブを行う。
これだけでもファンはついてくるに違いない。
チケットは値段も倍率も高いだろうけど。
気になるのはひじりメンバーを客席にってこと。
人の光を散々利用してきな輝けないアイドルたち。
私が本気で光を放ったら、彼女らにでさえ出る幕はない。
「お前ら2人じゃ、客席にも入れんがな」
最初から、何も落ち目の2人と組む必要なんてなかった。
予想通りと言った表情で、バカあほコンビがうなだれた。
社長は私ではなく、坂本くんをみていた。
「よろこべ少年。特等席を用意してやるぞ!」
とっ、特等席! すごい。すごいじゃないの
山吹さくらの単独ライブに、特等席を用意してもらえるなんて!
なんやかんや、坂本くんは社長に気に入られてる。
これは、間違いなくすごいこと!
もう直ぐ、私の夢が叶う。
そうしたら、堂々と次の夢が狙える。
======== キ リ ト リ ========
佐倉、次の目標に向かって走り出す!
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