スタジオ19 よーく話し合う②

 俺は、佐倉に答えた。


「1日1時間限定というのは、納得できない!」

「えっ? どうして? さっきはキスしないって言ってたのに……。」


 俺はたしかに言った。それは、さくらを独占したかったから。


 本当は、さくらには俺だけのために微笑んでほしい。


「それは、強制されるのがイヤだっただけ。絶対にイヤなわけじゃないんだ」

「じゃあ、キスしてくれるの?」


 俺は佐倉の少し尖らせた唇を見て、ドキッとした。

 昨日、屋上でキスしたときと同じだったから。




 佐倉が俺とキスしたいのは、ビジネスのため。


 俺のことが好きだからってわけじゃないのもイヤだった。


「ねっ、寝る前とかだったら、良いよ……。」

「なっ、何それ……。」


 佐倉の顔が真っ赤になった。俺も真っ赤。




 佐倉は夋巡ののちに言った。


「……あんまり、揶揄わないでよ」

「ない。揶揄って、ない。俺は佐倉とキスして一緒に寝たい!」


 俺はガチで言った。それが良いことかどうか、考えずに。


「そういうのは、みんなの前でいうことじゃないでしょう……。」


 佐倉に言われて周囲を見まわした。


 白目を剥いたバカあほと社長がいた。




 最初に立ち直ったのは、まりなさんだった。


「いっ、いいと思うわ。若いって、そういうことだと思うから」

「あゆまりお姉さん、ありがとう!」


「でででっ、でも。その。アイドルは恋愛禁止でしょう……。」


 次いであの子さん。やっと言ったという感じ。


 まだまだ動揺が隠せない。




 恋愛禁止。重い言葉だ。


 あの子さんが言うと、さらに重い。


「俺がキスするのは、佐倉であり、さくらじゃない。問題ある?」


 俺は開き直って言った。口を挟んできたのは、社長だった。




「あるわ。大アリよ!」

「どうしてですか? さっきは社長だって俺のことアテにしてたでしょう」


「わっ、私は、社長として商品管理しているまでよ」

「キスがダメなら、さくらのワンマン、成立しないじゃない。それとも……。」


「わーっ。坂本くん、何を言い出すの? 辞めてーっ……。」

「だったら、社長も黙っててくださいね!」


 そう。佐倉を山吹らせるのが俺だけなら、俺が最強!


 社長にだって口を挟ませない。




「3人とも待って。これは2人の問題なのよ。退がってて……。」




 佐倉が、3人を制して俺の前に立ちはだかった。


 1対1。当事者同士の話し合いは、ここからはじまった。


======== キ リ ト リ ========


2人の思いに、大きな違いはないはずですが。


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