ステージ10 クラスのみんなは②

 けど、それはできなかった。


「こんなときに、こんなところで、それはないだろう!」


 そうよね。坂本くんなら、そう言うと思った。


 けど、私は黙って見過ごせない。


 1度は退くけど、隙を見てこいつらを消す!


「……分かったわっ! 坂本くん、行きましょう!」


 私はそう言って、坂本くんの手を引いて歩き出した。




 人気のないところに来た。ここでなら、1分で充分ね。


 私は、坂本くんにキスをした。


 山吹ってから坂本くんが引き留めようとするのを振り切った。


 そしてそのまま教室へと駆けて行った。


「おっ、おいっ! 待ってよ!」

 

「いいから。行かせてっ」


 ごめんなさい、坂本くん。


 けど、こうするより方法はなかったの。




 私がみんなを制圧するのに10秒とかからなかった。


 みんな? 違うわ。今日からは下々でいいわね。


 私は一喝し、下々にひざまずかせたり土下座させたりした。


「成長するまでは、FCに入会するのを諦めて!」


「はい!」


 よきかな、よきかな。声をそろえる下々。見目良いぞ。


「佐倉菜花が山吹さくらだってこと、きれいさっぱり忘れて!」


「はい!」


「じゃあ、テキトーに泣いて!」


 下々は泣きじゃくらせたり怯えさせたり、負の感情を露出させた。




 坂本くんが入室した。


 入れ違いに私は一先ず教室を出た。


 廊下にいた男子下々数名が前屈みになって道を譲ってくれた。


 だから直ぐに廊下の端まで移動することができた。




 坂本くんが教室内の様子を確認したあと、廊下へ出てきた。


 私はすかさず叫んだ。




「あーっ! みんな、あれ見てーっ。変なのーっ!」


 これで下々の視線は、坂本くんに集まった。


 その隙に私はは女子便所に駆け込んだ。




「なんだ、あいつ。変なのっ!」


「本当だ。普通だけど、確かに変なのだっ!」


「変なの、変なの、変なのーっ!」


 廊下にいた下々が口々に言った。




 私は、最後の仕上げにと教室に行った。


「みんなっ! どうしたの? そんな風にひざまずいたりして?」


 まぁ、私がそうしろって言ったからってのは知ってるけど。


「さっ、佐倉じゃないか……。」


「今……山吹さくらが来たんだぜ……。」


「全部、あなたの言った通りだわ……。」


「山吹さくらは、俺たち高校生に手の出せる存在じゃないんだ……。」


「もっと頑張って、成功してからでないと……。」


「ファンクラブの会員にはなれはしない……。」


「はっきり言われて、目が覚めたよ……。」


「ファンになるためには……。」


「まずは成功することなんだ……。」


「月収1000万円を超えれば……。」


「ファンになってもいいってよ……。」


「……彼女が、そう言ったのね……。」


 下々がコクリと頷いた。




「そうなんだ……。」


「全ては、俺たちの傲慢だった……。」


「今の俺たちは、ファンクラブの会員になることさえ許されないんだ……。」


「だけど、はっきり言ってもらってよかった!」


「…………そうさ。俺たちには未来がある!」


「心の中で山吹さくらを応援することは、今でもできる!」


「今は心の中で応援しつつ、しっかり勉強し、将来に備えよう!」


「そして、いつか必ず山吹さくらのファンクラブに入会するんだ!」


「山吹さくら様、ありがとう!」

「山吹さくら様、ありがとう!」

「山吹さくら様、ありがとう!」

「山吹さくら様、ありがとう!」

 …………。




「……どういたしまして……。」


 私は小さく呟いた。




 結局、青木はその場でファンクラブを退会。


 クーリングオフが認めれらた。


 画像を見れなくなる代わりに、数万円を手に戻した。


「けど俺、バイトは辞めないぜ!」


「どうしてだ? それじゃあ学業が疎かになるんじゃないのか?」


「そうとも。明日のテストだって大変だろうに」


「いいや両方頑張る! そんなの言い訳にしたら山吹さくらに笑われちまうぜっ!」


「そうだな。俺は野球部と学業を頑張るぞ!」


「私は、恋と勉強!」


「うちは、部活と生徒会と勉強と家事手伝い。全部やるんやで!」


 これでまるっとおさまったわ。




 このあと青木は、『非会員様』と呼ばれるようになった。


 坂本くんは『変なのーっ』だって。


 山吹さくらにもらった名前なんだからよろこべって、下々が言ってた。


 申し訳ないわ。折を見て、坂本王子にでも変えましょう。




 ちなみに、私はというと『佐倉』のままだった。


======== キ リ ト リ ========


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