スタジオ06 本日最終枠! キスからはじまる撮影会③

 だが、逃すものか。坂本トングで捕まえてやる。


 俺は舌先を更に伸ばした。


 そこにあったのは佐倉下唇。乾燥していた。


 攻める前に守りが大事!


 まずは下から上へ坂本トングで佐倉リップをまわり全体に潤いをお届けしよう。




 だが、予断を許さない状況だ。


 佐倉ブレスはまだ荒い。


 いや、ますます地味に荒くなっていた。


 しかもピッチがはやい。


 だから俺は坂本トングに佐倉リップを3周させたら直ぐだ。


 左サイドから突撃を仕掛けるぞ。




 スリー佐倉リップからの坂本トング突撃オブ左サイド。


 守りを固めつつあいつを陽動。


 一気に攻勢に転じる。


 完璧な作戦だ。




 坂本トングに潤いを充分貯めて、あえてゆっくりとワン・ツー・3周した。


 さぁいよいよ、坂本トングが左サイドを突撃するときがきた。


 これは聖戦! 佐倉救出作戦だ。


 だが、それを待っていたかのように、あいつが動き出した。




 ちょうど逆サイド。


 俺の右サイドからあいつが突撃を仕掛けてきやがった。


 既に坂本リップ防衛網を抜いている。


 そして、俺の口内へと入り込んでいた。




 俺は慌てて坂本トングを左サイドから中央へと呼び戻した。


 それに合わせるようにして、あいつも中央に進出してきた。


 坂本トングとあいつが絡み合った。


 その瞬間に、俺の脳はガツンと何かに殴られたようになった。


 どうやら陽動は相手の方が1枚上手だったようだ。




 だが、一体どうやって脳にまで軍を送り込んだんだろう。


 やはり、虫か何かなのか。


 俺は情けなく坂本ブレスを吐き出す。


 自らの誤ちを、認めたくはないのだけれど。




 時を同じくして、佐倉ブレスも地味に荒々しく吐き出された。


 佐倉は苦しみから逃れんとしたのか、密着していた身体を俺から離した。


 こうしちゃいられない。早く佐倉を助けなきゃ。


 だが、俺の思いとは裏腹に、坂本トングは全く動かなかった。


 その代わりにあいつの動きも止まっていた。


 その間も俺の脳は得体のしれない攻撃にさらされ続けていた。


 あぁ、負けそうだよ。佐倉、許してくれ。




 そのとき、ピッという音が鳴った。


 30分の試合終了の合図だ。


 坂本リップと佐倉リップが離れた。


 これで、佐倉が救われたんなら、本望。




 そう思った瞬間に、俺は今までの全てがお遊びだったということを思い知った。




 俺の脳から足先まで電撃が走った。


 あいつが超絶変身を遂げたんだ。


 さくらトングへと。




 坂本トングと絡まっていたのは佐倉トング。


 坂本リップと佐倉リップが離れた瞬間、佐倉トングはさくらトングに変化。


 そのときはまだトング同士は絡まっていた。


 だから坂本トングは、不幸にしてさくらトングと接触してしまった。


 さくらトングの前では、さくら三重奏でさえも単なるBGMに過ぎない。


 そして、俺の身体は正直だったってことだ。


 これまでの数百倍の電撃に、俺の脳はショート寸前だった。




 もうだめだ。そう思った。




「坂本くん。頑張って!」


 俺は、意識が朦朧とする中で、その声を聞いた。


 さくらチアだ。さくらが俺を励ましてくれた。




 俺には、それに応える義務がある。


 さくらトングの素晴らしさを知るものとして。


 いつかはさくらリップを奪おうという野心を抱くものとして。


 そして、カメラマンとして!




「うぉおーっ! 俺は……写真を……撮るんだ……。」

「そうよっ。貴方は、私を写すために生まれてきたのよ!」


「そうだ。そうだとも。おれ、この刺激に耐える。耐えてみせる!」

「さすがよ、坂本くん。その息よ。頑張って!」


 さくらチアのおかげで俺は耐えしのぐことができた。


 あとは撮影を楽しむだけだ。


======== キ リ ト リ ========


さて、いよいよお次は、坂本カメラマンの登場です。


いつもありがとうございます。

これからも応援よろしくお願いいたします。

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