スタジオ05 混浴とキス②
特に強く感じたのは、温泉に入る前のことだった。
俺が何の気なしに男湯に入ろうとしたときだった。
佐倉が俺を止めた。
理由は、メンテナンス中だから。
この温泉の営業時間は21時まで。
俺たちが32階に降りたのは、21時10分くらい。
男湯に入れないのは、至極当たり前のことだった。
でもそれなら女湯だって入れないはず。
実際に自動ドアが赤いランプを灯している。
俺は大いに疑問に思い、聞いてみた。
「じゃあ、もう今日は入れないってこと?」
「うん。男湯には入れないわ……。」
「男湯にはって……。」
「このカードをピッてするとねっ!」
佐倉がそう言ってカードキーをピッとした。
すると女湯の自動ドアが普通に開いた。
佐倉は俺の服を引っ張り、そのまま女湯に入ろうとした。
俺は、抵抗した。だって、そうだろう。そこは女湯なんだから!
「ちょっと待ってよ。俺、女湯になんか……。」
そのときまた、ショートキスがあったんだ。
それは、ほんの数秒。
けど、その数秒だけで、さくらが俺を説得するには充分だった。
「いいから、いいから。一緒に行こう! バスタオルは大丈夫だから」
そのあとは、さくらが引っ張らなくても、俺は自分から歩いていた。
だって山吹さくらと一緒に入湯するなんて、すごいことだろう!
俺の頭は佐倉とさくらを同じだって思っている。
だが、俺の身体はさくらのことが圧倒的に好きだったりする。
そんな自分がイヤだった。
だったら自分を嫌いになればいいのに、俺はそうはしなかった。
俺が嫌いになったのは、佐倉とさくらだった。
ほんの少しではあったけど。
女湯の脱衣所には、俺と佐倉の2人きり。
これはもう、立派な混浴。
男湯はメンテナンス中で入れない。
女湯は一般客はメンテナンスという名目で入れない。
実際は、さくらの事務所が22時までを買い上げていて佐倉が自由に使える。
そんなの、知らなかったよ。
さくらスマイルに誘われてこんなところまでのこのこやってきた俺。
これからどうすればいいんだろう。
ここで脱げばいいのかな。
「坂本くん。お願いがあるんだけど……。」
「何だよっ!」
佐倉はタオル1枚だというのに、地味だった。
とはいえ、その地味さ加減が色気を引き出していた。
でも、バスタオルは大丈夫!
佐倉のお願い、聞いてあげたい。
「あのね、パンツの洗い方教えて欲しいの……。」
「えっ? いいけど……。」
「よかった。独り暮らしをはじめてから、ずっと困ってたの」
「まさか、1回も洗ってないのかっ」
俺は冗談めかしてそう訊ねた。
そりゃぁ、さすがにないだろう。
いくら佐倉だからって、洗ったことないなんて、ありえない。
俺はそう思っていた。
もし本当に洗ったことないって思ってたら、逆に聞き辛いもの。
ところが、佐倉は首を縦に振った。
「私、お母さんと生き別れて、男ばかりの家に育ったから……。」
その顔は笑顔だった。
悪いことを聞いてしまった。
そうだったんだ。
お母さんと生き別れたっていうのは初耳。
俺は両親にだけは恵まれていた。
おじいちゃんやおばあちゃんにも。
だから複雑な家庭の事情とかって、よく分からない。
でも、佐倉が困ってたんなら、その力になれるのはうれしい。
俺と佐倉は、バスタオル1枚の姿同士。
まぁ、大丈夫だ。
だが、地味に大きい佐倉のおっぱいが、はみ出しそうでちょっと気になった。
俺は顔を真っ赤にしていた。
それが温泉のせいだと勘違いした佐倉が俺を気遣う。
俺は気丈に答えた。
「大丈夫だから!」
GJポーズのおまけ付きで。
佐倉が、手にしていた下着を俺に渡しながら言った。
「はい。今日のところは、見てるから。坂本くんが洗って!」
「おぉっ、そうか、そうか……。」
それは、大丈夫なおパンティー&ブラジャーではなかった。
今までのものと決定的に違うのは、それらが生だってこと。
だからあまりにも刺激が強い!
生でなければ、数日から数十分も経っていれば平気だったのに。
俺は、おパンティー恐怖症に戻りかけた。
もう、顔が真っ赤だよ!
けど、よく見れば佐倉の渡してくれたのは、鮮やかなピンク色の逸品だった。
その色は、高校生生活の色付いていくことを象徴しているよう。
俺はその色に励まされた。
なのにいつの間にか、耳まで真っ赤になっていた。
俺にとって、頭の中と身体の反応とが違うのは、日常茶飯事になりかけていた。
======== キ リ ト リ ========
身体に正直に! 男の子ならそんなときもあるはずですよね。
いつもありがとうございます。
これからも応援よろしくお願いいたします。
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