スタジオ05 混浴とキス①

 思ったよりも過激だった部屋の片付け。


 おパンティー&ブラジャーの洗濯も含めて守備よく終えることができた。




 佐倉が部屋に戻った。


 エステの効果というやつが地味に感じられた。


 エステなんて、佐倉として地味に生活していく上では不必要なこと。


 けど佐倉は自覚している。


 その投資が山吹ったときにも及ぶことを。


 いや、そのときにこそ多大なる効果を発揮することを。




 佐倉はさくらの奴隷なんじゃないか。


 俺は勝手にそう思ってしまった。


 それくらい佐倉は地味で健気だったし、さくらは激しくて華やか。


 そして、エステから帰ったばかりの佐倉は、地味に小顔だった。




「えっ、今日はフェイシャルは施術してもらってないのよ」

「そうなんだ。顔がしゅっとしてるから、てっきり……。」


「レッグケアには地味に小顔効果があるっていうから、きっとそれね。ぷっふふふ」

「なっ、何で笑うんだよ」


 佐倉は、あくまでさくらとしての魅力を増すためのエステって言ってた。


 けど、俺には佐倉の魅力も増しているように感じられた。


 だから俺は、佐倉が笑ってくれたのがうれしい。


 反面、佐倉が笑った理由に興味津々だった。




「うれしかったの。坂本くんが地味な変化に気付いてくれたから」

「いやいや。変化どころか、いつも変身すんじゃん!」


「それも全部、坂本くんのお陰だよ。坂本くんがいないと私……。」

「お、俺がいないと……。」


「あんなに長く山吹れないもの! ありがとう」

「おっ、お安い御用さ。キスくらい」


 佐倉に地味にお礼を言われ、俺はうれしかった。


 だからついキスくらいなんて口走ってしまった。


 俺のそういうところを佐倉は見逃さない。


「それは違うよ。女の子にとって、キスは重いんだから。おこだよ」

「すっ、すみません」




 おこは当然だと思う。


 キスくらいなんて言ってしまったのは、完全に俺の失言だ。


 俺にとっても、キスはそんなに軽くない。


 だから、素直に謝った。




「素直でよろしい」

「なぁ、佐倉。佐倉は普段と山吹ってるときと、どっちの自分が好きなんだ?」


「それは断然、山吹ってるときかな」

「そうなんだ。それは、どうして?」


「だって……秘密かな……。」


 佐倉はそれっきり、地味に黙秘権を行使していた。




 佐倉がさくらのことの方が好きな理由。


 俺はすごく気になった。


 まるで、佐倉はさくらに魅入られた奴隷……。


 佐倉が急に黙り込んだ。




 俺は取り残されて妙にハイテンションだった。


 間を繋ぐためってのもある。


 変なことを考えてしまったってのが大きい。


 干してあるブラジャー&おパンティーを自慢気に見せびらかした。


 よく考えたらキモいことをしたなって思う。


 だけど佐倉は地味に笑ってくれた。


 そしてその直後、俺の唇を短く奪い山吹ってから言った。




「坂本くん。おパンティー苦手なのにこんなことまでしてくれて、ありがとう!」

「いっ、いやいや。どういたしまして」


 さくらスマイルとさくらスメル、そしてさくらボイス。


 その三重奏をこの日だけで何度体験できただろう。


 俺は幸せだと思う。


 だから俺はまた妙に舞い上がった状態で返事をした。


 だが、ふと違和感を覚えた。


 佐倉は何故、ショートキスをしたんだろう。


 それがどこかで心に引っ掛かった。




 素直に聞けばいいものを、俺はそうはしなかった。


 そして勝手な想像をしてしまった。


 佐倉は、さくらになると俺が舞い上がるのを知っている。


 そしてそんな俺を利用するためにこうしているのではないかと。


 さくらの奴隷は、佐倉ではなく俺なんだ。




 エステからの帰り道。


 佐倉はわざわざ俺のために男モノのパンツを買ってきてくれた。


 アイドルがそんなことしていいのかって思った。


 でも、佐倉に言われて妙に納得した。


「佐倉菜花でいれば、誰も山吹さくらだとは思わないから」


 因みにエステの担当者は、もう7回くらい通っているのに気付いていないらしい。


 その証拠に、山吹さくらのFCに入らないかと布教活動を繰り返しているらしい。


 ご本人様を目の前に、ご苦労なことだよ。


 世間の佐倉とさくらを見る目の違いは、佐倉にとって厳しい。




 でも俺は、佐倉とさくらを同一視するようになってきた。


 山吹さくらが輝いているのは佐倉のおかげ。


 佐倉菜花が不摂生をせず地味に誠実に暮らしているから。


 だから、本当は佐倉スマイルでも充分にうれしかった。


 それなのにさっきの佐倉は、わざわざ山吹ってからお礼を言った。


 どうして? いかん。俺、ショートキスにこだわり過ぎ!


 けど、このあとは、そんな風に感じることがいくつもあった。


======== キ リ ト リ ========


疑心暗鬼、恋愛にはつきものです。坂本くん、頑張れ!


いつもありがとうございます。

これからも応援よろしくお願いいたします。

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