スタジオ03 発明の代償②

 そんなこと、していいものなんだろうか。


 俺も佐倉も健全な高校1年生。


 そんな2人がベッドの中で、キスをする。


 そんなことしたら俺、頭も身体も変になりそうだ。


 俺は素直に断ろうって思った。


 けど佐倉は地味に俺の懐におさまってしまい動きそうにない。


 雷をやり過ごすためだ。


 そして佐倉は俺に期待している。


 ドーンのあとはベッドインに向けて支度することを。


 けど俺には断りたくっても断る暇がなかった。困った……。




 いや。


 ここは断固として断るべきだ。


 佐倉とベッドの中でキスするのなんて、俺にはまだ早い。


 もしそうするにしても、もっとこう、お互いを理解しあってからがいい。


 ちゃんと付き合ってからにしたい。


 正直、ちょっと心苦しい。


 もったいないって気持ちもあるけど、ちゃんと断ろう!


「佐倉、そういうのはもっとこう……。」


 あーぁ、俺、何もたもたしてるんだよ。


 はっきり言えよ。


 ベッドでキスはお断りだって。


 それだけじゃないか。


 でも、地味に必死な佐倉を見ていると、そんなこと言えない。


 さくらスマイルを想像すると、もったいな過ぎる。


 そんなこと、言えない……。


 俺がまごついている間に佐倉が動き出した。




 それは、不可抗力ではなかった。


 意図的に仕組まれたものだった。




 佐倉アイが俺を真っ直ぐに見つめた。


 どこかに狙いを定めたかと思うと、佐倉はおもむろにまぶたを閉じた。


 そして、ピカーッとなった瞬間に、佐倉リップは坂本リップにくっついた。


 これは……。




 一蓮の実験的なキスは全て俺からアクションを起こしていた。


 不可抗力だったファーストキスは除くけどね。


 でも、今のは佐倉のアクションではじまった。


 佐倉が俺を求めてきたんだ。


 何のためかって、それは、ベッドでキスをするため。


 そしてそれは、撮影をするため。


 ファンへの恩返しのため。


 佐倉のキスは、ファンのためってことだ。




 それが、俺にはとっても不潔なものに感じた。


 キスは、愛がなきゃだめなんだ!


 だからこのキスが終わったら絶対に言うぞ。




 もうキスは辞めようって。




 キスは50秒くらい続いた。


 ドーンからはじまり、次のドーンが終わるまで。


 まず、俺の方に乗っていた佐倉ハンドが離れた。


 次いで、佐倉リップがテイクオフ!




 今がチャンス!




 俺は、佐倉に向かって言おうとした。


 けど、佐倉はそこにはいなかった。




 いたのは、さくらだった。


「坂本くん。今よ。支度、頑張ってーっ!」

「おおーっ! 任せとけっ!」


 俺は、さくらチアには逆らえない。


 それどころか、フルパワーで40秒ほどで支度を終えた。


 いつでもベッドでキスができるように。


 俺は、わけの分からない幸せを噛み締めていた。




 さくらは、パンッと音を立てて手を合わせた。


 脇をギュッと締めていて、懐が狭くなっていた。


 その分、さくらおっぱいが水着の中でズンと前に出ていた。


 大丈夫大丈夫……。


「ありがとう、坂本くん! 助かっちゃった!」

「言ったろ、任せろって!」


 俺は、反射的にGJポーズで応えた。


 さくらが手を下ろし、近付いてきた。


 笑ってた。


 さくらスマイルは最高! 言うことない。


 それまで両腕に前へと追いやられていたさくらおっぱい。


 広くなったさくら懐を謳歌するようにぼいんぼいんと飛び跳ねていた。


 ビバ、さくらおっぱい!


 俺の顔が耳まで真っ赤だったのは言うまでもない。




 えっ。さくらリップと坂本リップはその距離、数cm。


 夢にまで見たさくらリップとの濃厚接触はもう間近。


 ドッ、ドキドキする! イッちゃいそうだよ。


 刹那、さくらリップは地味な佐倉リップへと変わり、坂本リップにくっついた。


 それはまるで、息継ぎしているよう。


 人を散々利用しようという、佐倉の魂胆がみえみえだ。


 よしっ。


 今度こそ、断ろう!




 キスを終えた直後、さくらが甘えた声で俺に言った。


「ベルトの金具がお腹に当たると痛いの……。」

「じゃあ、外そう!」


 俺はすかさずベルトを外した。


 どうだい。これでいいかい!


 俺のズボンは、締め付けるものを失くしずり下がっていた。


 さくらはマリア様にお祈りするみたいに手を胸の前で合わせ、少し困り顔。


「中途半端だよっ!」

「じゃあ、脱ごう!」


 俺はズボンを脱いだ。


 さらに靴下を脱ぎ、Yシャツを脱ぎ、中シャツを脱いだ。




 さくらスマイルが導いてくれたから、楽勝だった。


 俺は、あっという間にパンイチになっていた。


 もう、さくらに逆らうことができなくなっていた。


 もう、断ろうだなんて、思わない。




 息継ぎみたいなキスのあと、変な姿勢の俺を気遣って、さくらが言った。


「寒い? 先に布団の中で待ってて!」

「うん。そうするよ!」


 さくらスマイル、はよう、はよう! カモン!


 もう俺は、いろいろとヤルつもりで、心ははしゃぎまくっていた。


 楽しみで仕方がないって!




 ……………………。




 って、違うじゃん。




 随分と待たされたので我にかえった。


 俺は、どうしてこうもヘタレなんだ。断ろうっていうのに。


======== キ リ ト リ ========


坂本くん、どう考えても断る断るサギですよね! 許せません。


いつもありがとうございます。

これからも応援よろしくお願いいたします。

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