スタジオ03 発明の代償③

 俺の横に佐倉が横たわった。


 さっきとは違う水着姿。


 どう違うかって、よりセクシー。


 ただしその着こなしは、とっても地味。




 これで最後にしよう。


 俺はそう思いながらも、結局は佐倉にキスをした。


 キスを終えた頃には雷も収まっているだろう。


 佐倉だってそういつまでも俺と一緒にいたいとは思わないだろう。


 断るにはちょうどいい。キスが終わったあとは。




 ベッドの中は快適。


 1時間も苦じゃなかった。


 ここは、ラグジュアリーホテル。


 用意されているのは、ラグジュアリーなベッド。


 ふかふかで、佐倉を支えるのに余分な力を必要としない。


 枕もラグジュアリーで、首筋への負担は皆無だった。


 とっても心地いい。


 こんなところで寝れるなんて幸せだなって思う。


 おまけにキスまでついてくるのだから。


 佐倉は、何泊もここで過ごしているらしいけど、羨ましいな。




 でもそれは、佐倉が頑張ったから。


 山吹ってる佐倉は無敵。芸能界も放っとかない。


 山吹さくらは次々にチャンスを与えられ、ことごとくものにした。


 佐倉がこうしてラグジュアリーな思いをするのは、当たり前のことだと思う。




 でも、俺は違う。


 ただキスの相手をするだけで何もしていない。


 それなのにこんなところでキスしながら寝転がっていて、身にあまる。


 こんなことしてていいのかっていう気持ちになる。


 罪悪感が俺の頭の中にいっぱいに広がる。




 俺は佐倉に必要とされている。


 それは事実だ。


 だけどその形は健全だろうか。


 否。


 不潔とさえ思う。


 だって、佐倉はファンのために俺とキスをしているんだから。


 俺のことなんて、山吹るために利用しているに過ぎない。


 そうに決まっている。




 これが最後。


 俺はもう、佐倉とキスをするのを辞めよう。


 キスが終わったら、直ぐにでも言ってやろう。


 もう最後だって。


 たとえ雷に怯えていたって、そんなの、知ったこっちゃない!




 キスすれば山吹れるんだったら、誰としたっていいじゃん。


 俺なんかよりも相当のイケメンを雇えばいい。


 さくらに釣り合うほどの男がいるとは思えないけど俺だってそうだろう。


 俺の中を俺不要論が支配した。


 それはとても辛くて情けないことだ。


 兎に角、これが最後。




 佐倉には俺が拒もうとしているのが、伝わったのかもしれない。


 キスを終える前、佐倉は徐々に俺を避けるような姿勢になった。


 俺の背中にまわっていた手を解いた。


 絡まりそうな脚をベッドからはみ出させた。




 そっちがその気なら俺だって。


 まだキスをしたまま。


 俺は佐倉のおっぱいの半ば下敷きとなっていた、幸せな右腕を引き抜いた。


 佐倉の背中に無造作にまわしていた左腕も離した。




 1つだった2人の身体は、どんどん距離を広げた。


 そして今や、くっついているのは佐倉リップと坂本リップのみ。


 キスしているのに、俺と佐倉の心は遠い。




 よく考えたら、俺は山吹ってるときの佐倉に指一本触れていない。


 触れさせてもらっていない。


 ちょっと頭にきた。


 お高くとまってるんだ。


 佐倉ならいいけど、超絶人気アイドル山吹さくらには触らせないってか。


 まぁ、当然だよな。




 時間だ! 佐倉リップが離れていった。


 今を逃さず言ってやろう!


「佐倉、こんなの……。」

「……誰でもいいわけないでしょう!」


 さくらが俺の言葉を遮った。


 その顔は、怒っていた。


 さくらおこなんかではない。


 ちょっと古い言い方だけど、あれだ。えーっと……。


 さくら激おこスティックファなんとかかんとか……だった。




 俺は言葉を失った。


 マジで怖かったから。


「坂本くんだからキスしてるのが、分からないのっ!」


 俺不要論は敗れ去った。


 さくらの口からそう言われたんじゃ、逆らえない。




 佐倉が俺を必要としているのは事実。


 それだけで、喜ばしいことだって、さくらを見ていて思った。


 そうなると他の諸問題はどうでもよくなった。


 もう、全部、忘れた!


 惚れたら負けって、こういうことなんだ。




 俺は、さくらにほの字ってこと。


「さくら、俺、ごめん!」

「坂本くん……いいのよ。私も言い過ぎた。もっと坂本くんのこと真剣に考えるわ」


「あぁ、俺だってそうさ。だからさくら、存分に撮影するんだぞ」

「もちのろん!」


 さくらの撮影は順調だった。


 俺も坂本ハッスルでそれに応えた。


 さくらは水着だったから着替えるときが、もう大変。


 俺は1番上の掛け布団の端辺りを両手で持ち、大の字になってそれを広げた。


 こうしていれば、俺からはさくらチェンジの様子は一切見えない。


 ただし、さくらチェンジの残骸は目に入った。


 脱ぎ捨てられた水着。ちょっと前までさくらが身に付けていた水着。


 無造作というよりはこれみよがしに置かれていた。


 ううっ、刺激的ーっ!


「坂本くん、ありがとう。良かったらご飯食べてって!」


 まだ撮影の途中だけど、さくらがそう言った。


 俺には断る理由がなかった。




 俺は、素直に言った。


「もちのろん!」

「やったーっ!」


 その瞬間のさくらスマイルはすごかった。


 記憶とそれを呼び戻す妄想だけで箱ティッシュ3箱分にはなる。


 ワンスマイル・スリーボックスだ。スリーボックススマイル!


 そしてそのとき、さくらはある発明をした。


 俺にとっては禁忌の発明。


======== キ リ ト リ ========


禁忌の発明、気になります。2人はいよいよ爆発するのか、しないのか。


いつもありがとうございます。

これからも応援よろしくお願いいたします。

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