スタジオ03 発明の代償①

「あーあっ。こりゃあ、1時間は止みそうにないな……。」


 俺は佐倉に寄りかかられた状態で、スマホを取り出してからそう言った。


 佐倉は、また頭を起こして、佐倉アイを俺に向けた。


「じゃあ、ちょうどいいわ。次枠は1時間にしましょう」

「えっ、無理だよ。あと1時間はこの調子が続くんだから」


「大丈夫。坂本くんとキスしてれば怖くないもの」


 その瞬間、また稲妻が走り、雷鳴が轟いた。




 さっきほどではないけど迫力充分。


「きゃっ……。」


 佐倉はまた俺の胸に額をつけた。


 怖くないってことはないだろうに。


 それでも、キスをしようとしている。


 撮影を続けようとしている。




「佐倉は強いな。俺だったら布団にくるまって寝ちゃうよ」


 俺は佐倉背中をすりすりと摩りながら言った。


 水着姿だから、直に肌に触れちゃった。


 佐倉の肌は柔らかくって、すべすべ。


 地味に気持ちいい。役得、役得。




 佐倉はしばらくは俺の胸に額をつけたままだった。


 でも、何かを言うときだけは佐倉アイを俺に向けてくれた。


「……坂本くんって、頭いいのね! その手があったわ……。」


 佐倉は地味に興奮気味に言った。


 俺、頭いいなんて言われたのははじめて。


 普通にうれしかった。




 けど、その手って俺、何か提案したっけ。


 佐倉は一体、何をはじめようとしているんだろう。


 考えたって仕方がない。


 素直に聞いてみよう。


「なぁ佐倉。その手って何だ? 一体、何をはじめる……。」


 佐倉はしばらく返事をしなかった。


 ただ黙って俺の胸に額をつけていた。




 そのうちにまた稲光と雷鳴。


 俺の胸に、佐倉の顔が沈んだ。


 それがおさまった直後。


「手伝ってくれる? 先ずは退かさないと!」

「退かすって、何を、どこへ?」


「ベッドの上の服。どこかシワにならないところへ」


 ベッドの上には、服というか撮影用の衣装が並べられていた。


 佐倉が撮影の順番を考えて置いたもの。


「何でまたそんなことを?」


 俺が尋ねたときには、佐倉は俺の懐の中で静止していた。


 佐倉は、雷をやり過ごそうとしていたんだ。




 その証拠に、また雷鳴が響き終わったあとに、すかさず言った。


「次のドーンのあとに動いて」

「だから、何でそんなことするんだよ……。」


「決まってるでしょう。ベッドで、布団の中でキスするのよっ!」


 そのひとことは、俺にとっては……。




 雷以上に、ドーンだった。


======== キ リ ト リ ========


リア充爆発しろって思いませんか? 


いつもありがとうございます。

これからも応援よろしくお願いいたします。

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