ステージ09 発動、ダークおっぱい①

 しいちゃんったら、何、知ったかぶりして!


「予想通りってところね! じゃあ、今日は解散!」


 言うなり、逃げるように出て行った。


 他のメンバーもそれに追随。




 私は坂本くんと2人きりになった。


 それはうれしい。けど、気まずい。


「坂本くん、頑張ろうねっ!」

「はい!」




 でも、ゆっくりはしてられない。


「大変。急がないと学校に遅れちゃう!」

「本当だ、もうこんな時間!」


 私たちは33階へ急いだ。


 その途中、エレベータの中で、坂本くんが言った。


「なぁ、佐倉。俺、本当にさくらのおっぱい触ったのかなぁ」

「えっ?」


「全く記憶がなくって。でももし触ったんなら……。」

「……サイッテー!」


 覚えてないなんて、寂しい。


 だったら、思い出させてあげる。


 私は坂本くんの手を掴み、おっぱいを握らせた。


 そしてキス。本当はずっとキスしていたいけど、短めに終了。


「坂本くん。どう?」

「きっ、気持ちいいーっす!」


 うんうん。おっぱいには私の魅力が凝縮しているといっても過言じゃないわ。


 これぞ、ダークおっぱい!




 私はドヤって言った。


「思い出したでしょう、私のおっぱい!」

「はいっ! 幸せです! 一生忘れることはないと心得ます……。」


 うんうん。そうでなくっちゃ!


「よろしいっ! でも、イッちゃったね……。」

「えっ?」


 坂本くん、イッちゃうことの方が多い。


 イカないときって、何か法則があるのかしら。


 調べてみよう。




 エレベーターが33階に着いた。


「もっとすごいことしてもイかなくなること。それがクリア条件になると思うの」

「ええーっ!」


 やっぱり、坂本くんには荷が重いのかな。


「そうでなきゃ、私たち、もう会えなくなるわ……。」

「会えなくなるって?」


「社長が言ったでしょう。諦めろって」

「じゃあ諦めるっていうのは、会えなくなるってこと?」


「いや、そんな生易しいものじゃないと思う。坂本くんにとっては……。」

「そんな……。」


 坂本くんが私を庇ってくれたとき、うれしかった。


 ずっと一緒がいいって思った。


「社長を甘く見ないで。修行は、生きるか死ぬかのデスゲーム!」

「……。」


 だからこそ、手放したくはない。坂本くんを。


「今ならまだ間に合うわ。社長に修行しないって言えば、命だけは……。」

「ダメだっ! それじゃさくらがライブできないじゃん」


 まっ、また。そんなにムキになって……。


「……そうね。でも、そんなの私の我儘だもの。録画配信でも充分楽しいし」

「いや、違う。俺だって観たい。さくらのライブ!」




「えっ?」




 坂本くん、私のためじゃなくって、自分のために。


「だから、観たいんだ。俺が山吹さくらのライブを!」

「坂本くん……。」


「だって俺、昔、山吹さくらに救われたことがあるんだ!」

「そんなことあったかしら?」


 これは初耳。


「テレビに出ているのを観て、俺が勝手に救われたって思っただけ」

「そ、そうなの……でも、ありがとう。そう言ってもらえると、うれしい!」


「へへっ、どういたしまして! でもそれは、修行を突破してからだろ!」

「そうね、坂本くん!」


 本当は、止めようと思ったけど、もう手遅れみたい。


 こうなったら、全力で坂本くんを応援する!


「坂本くん。くれぐれも無理しないでねっ!」


 一応釘を刺しておいた。




 登校中、私はなるべく坂本くんの手を握った。


 そうすることで、女子への免疫力を高めてもらわないと。


 佐倉菜花じゃ、焼け石に水だろうけど。


 やらないよりはマシ。




「そういえば、佐倉って友達いるの?」

「友達って呼べるような子は、いないかな……。」


「そうか。じゃあ、俺と一緒に友達作ろうな」

「え? どうして、わざわざ友達なんか作るの?」


「はぁ? 普通に考えて友達が多い方が楽しいじゃん!」

「そうね。でも、私が納得できないのは、わざわざ作るってところ」


「え?」

「友達って、自然にできるものじゃない」


 ちょっと粋がっちゃった。


 本当は私、中学生の頃は友達なんかいなかった。


 その代わりに奴隷が400人あまりいたけど。




 この日、学校では生徒会・委員会・部活動の合同発表会、兼、新入学生歓迎会。


「佐倉は何部に入るの?」

「あー。私はそういうのは、ちょっと……。」


「そうだよな。佐倉は忙しいもんな」

「……あっ、でも活動日が少ない部なら、平気かもしれないわ」


 坂本くんと部室で2人きりになれるようなゆるい部活なら大歓迎。


 つまり、活動内容よりも条件優先で決めることにした。

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