トドBL

ななおくちゃん

トドBL

「オウッ! オッ、オウッ!」


 トドは戸惑っていた。これは一体どういう状況なのだ。

 気がつけば水族館の壁に押し付けられていて、目の前ではオットセイがトドを睨みつけている。

 普段は優しい笑みをいつも自分に向けているオットセイのこれまでに観たことのない表情に、トドは思わず怖気づく。


「オウッ? オウッ、オウッオウッ」


 そう訊ねるトドに対し、オットセイは、


「オウッ! オウッ、オウオウオウッ!」


 と答えた。

 トドは衝撃を受けた。オットセイが、まさかそんなことを考えていたなんて。

 普段のオットセイなら、


『オウッオウッ、オウッ!』


 と優しく答えてくれるはずだ。

 それなのに、どうして今日はこんなに感情が高ぶっているのか。

 そのとき、トドはピンときた。


(オウッ……)


 そういうことではないのか。

 たしかにトドには、未だに忘れられない過去の恋人・セイウチがいた。

 しかし、セイウチとの恋はもう終わったことだ。

 たしかに別れ際にセイウチが残した言葉――


『オウッ、オウオウオウッ、オウッオウッ!』


 その一言は、未だにトドを束縛し続けている。

 だけど、オットセイと出会ってトドは変わった。セイウチの呪縛から、やっと逃れられそうな気がしていた。

 だけど、自分の優柔不断な態度が、あんなに優しくて寛容なオットセイをこんなに苦しめていたなんて。


「オウオウオウ!」


 すると突然、オットセイの唇がトドの唇を勢いよく塞いだ。


「オッ……」


 そして、オットセイの手がトドの身体をまさぐる。


「オウオウオウ! オウオウオウ!」

「オッ、オウオウッ。オウッ、オウオウオウ!」

「オウオウ、オッ、オオッ、オウッ!」

「オウオウ! オッ、オウオウオウ」


 たしかにオットセイの言うとおりだった。トドは反論できず、なされるがままオットセイに身体を預ける。

 トドの身体が淫靡な熱を帯びてくる。


「オウオウオウ、オウオウオウ」

「オッ、オウオウオウ!」


 違う、俺が言いたいのはそんなことじゃない――もうセイウチとのことは終わったんだ。俺にはもうオットセイしか見えないんだ。

 そう伝えたいのに伝えられない、トドは自分の不器用さを呪った。

 するとオットセイがトドの耳元で、


「オウッ、オウオウオウ?」


 と囁いた。

 その恥ずかしいセリフに、トドの身体は羞恥を覚えながらも反応を示してしまう。


「オウオウオウ、オウオウッ?」


 そんないやらしいこと言えるはずがない。だけど、オットセイの要求に、つい答えそうになってしまう。


「オッ、オオオッ……」


 そのとき、ドアが勢いよくバン、と開かれ――。


「オウッ! オウオウオウ!」


 アザラシが乱入してきた。


「オウッ、オウオウッ、オッ!」

「オウオウ! オッ、オッオオウッ!」


 そう叫ぶなり、アザラシがオットセイの顔を殴る。


「オッ、オオッ!」

「オッ、オオウオウ!」


 吹っ飛んだオットセイに駆け寄るトド。アザラシは目に涙を溜めて、言った。


「オッオウ、オオッオウオウオウ。オオウ? オウオウオウオウ。オウオウッ、オウオウオウオウ。オッ、オオッ、オオオッ、オウオウオッオウ! オオウオウオッオウオオオオッ。オウオウッ! オッオッオッ! オオウオウオウ! オッオウ。オオオッ。オッオウ、オオッオウオウオウ。オオウ。オウッオウオウ。オウオウッ、オウオウオウオウ。オッ、オオッ、オオオッ、オウオウオオウ! オオウオウオッオウオオオオッ。オウオウ。オッオッオッ! オオウオウオウ! オッオウ。オオオッ。オッオウ、オオッオウオウオウ。オオウ? オウオウオウオウ。オウオウッ、オウオウオウオウ。オッ、オオッ、オオオッ、オウオウオッオウ! オオウオウオッオウオオオオッ。オウオウッ! オッオッオッ! オオウオウオウ! オッオウ。オオオッ。オッオウ、オオッオウオウオウ。オオウ。オウッオウオウ。オウオウッ、オウオウオウオウ。オッ、オオッ、オオオッ、オウオウオオウ! オオウオウオッオウオオオオッ。オウオウ。オッオッオッ! オオウオウオウ! オッオウ。オオオッ!」


 トドは感動した。アザラシがそこまで俺たちの事を考えていてくれたなんて。オットセイはアザラシの言葉を聞き、うなだれていた。


「オッ、オウオウ。オウオウオウ」

「オオオッ、オウオウ。オオオ?」

「オオッ、オオウオウオオッ」


 自分の行いを悔いて、反省の弁を述べるオットセイ。

 満足そうにほほえみながら、アザラシはその場を後にした。

 トドとオットセイはアザラシの後をオウッことなく見つめ合う。


「オオウ、オオウオウオウ?」

「オオウオウオウオウ」


 トドはそっとオットセイを抱きしめ、二人は熱いキスを交わすのだった。




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