第6話 ハルくんの世界

 湯川晴彦。

 東桜大学経済学部一年。

 群馬県高崎市出身。

 2018全日本ジュニア選手権21位(ショート落ち)

 趣味、プロ野球観戦。

 特技、スノボ。

 好きなブランド、ステューシー、アディダス。


 私が必死にかき集めた、ハルくんの個人情報は以上。


 ハルくんはツイッターもフェイスブックもやってない。

 だから、どんな風にモノを考えるかとか、何となくの性格の偏りとか、口癖とか、そういうパーソナルな部分は謎。


 その代わり、インスタを頻繁に更新する。

 多いのはとにかく、ブランドものの服と靴。

 文章は添えず、#MyNewGearというハッシュタグと共に、ひたすら画像を投稿する。

 初めて見た時、私は思わず、うげ、と声を出してしまった。

 ボンボンじゃん、と引いてしまったのだ。

 でも考えてみれば、そんなのは当たり前だ。

 フィギュアスケートを大学まで続けるような人は皆、多かれ少なかれお金持ちに決まっている。


 家から通える国公立じゃないと大学は行かせない。

 厳しく親に言われた自分の過去を思い出し、虚しくなった。

 まあ、もう十五年以上昔の話なんだけど。


 私とハルくんは、住む世界が違う。

 年が離れている。

 割り切れる分、よかったのかもしれない。

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