第9話

殿下との秘密の会合後、私は普段と変わらない生活を送っていた。と言っても別に何もしていなかった訳ではない、犬を使って殿下の婚約者であるマリン・ササリア侯爵令嬢について情報を集めたり、私の婚約者(仮)のカルロス・ムルール公爵子息の情報を集めたりしていた。まぁ私は座って報告を聞いていただけだけど

そうそう、私の婚約話は一旦保留になっている。父が体調不良を理由に爵位と当主の座を息子のアレク・ベスターに譲ることになったので婚約の話は新当主であるお兄様が進めるので待ってほしいとムルール公爵家に手紙を送ったからだ。ムルール公爵家もどうやら私の婚約者(仮)であるカルロスがもう反対しているらしく説得に時間が必要としていたらしい(犬情報)なのでムルール公爵家としては渡りに船らしく、すぐに了承の返事がきた。

領地にいるお兄様がこちらに来るまでおそよ一月はかかる。そしてお兄様はもちろん私の味方なのでギリギリまで話を延ばしてくれるだろう。だが、それでも合計で三月が限界だろうからさっさと殿下の問題をクリアして殿下に協力をしてもらわなければ‥‥

私は決意新たに殿下の婚約者でマリン・ササリア侯爵令嬢の情報を吟味した。

マリン・ササリア侯爵令嬢はまぁ貴族令嬢ありがちのお花畑令嬢だわ

両親から溺愛され傲慢で我儘放題

学園でもすでに数人の女子生徒を退学に追い込んでるし、これならすぐに排除できちゃうんじゃないかしら?


それより問題はササリア侯爵令嬢よりササリア侯爵婦人の方よね、ササリア侯爵のほうは真面目な感じなので問題ない、でも侯爵婦人はなぁ~、変につついて王妃様出てきてもいろいろめんどくさいからササリア侯爵令嬢と一緒に消えてもらいたいのよね

どうしようかしら?


☆☆☆


翌日私はルイスを通じて殿下に連絡をいれた。いろいろ確認したいことがあったからだ。なので本日も以前と同様に他の生徒が授業を受けている間に私と殿下は学園の屋上で待ち合わせをした。


「殿下、ご機嫌麗しく」

「‥‥‥‥ああ、」

「?」


私が殿下に綺麗なカーテシーをして挨拶をすると殿下は数秒私を見つめてからなんだか歯切れの悪い挨拶を返した。

何かしたかしら?

私はとりあえず会話を続けた


「ルイスは何か粗相いたしていませんか?」

「い、いや、ものすごーく有能で助かってる、」


まずはルイスについて訪ねると殿下は大丈夫と返答してくれた、なぜか有能と言った時遠くを見つめていたが気のせいかしら?


「それら良かったです、ルイス、ご苦労様、引き続きお願いね」

「はっ!!この命にかけまして完璧にご命令を遂行いたします!!」

「よろしい」

「‥‥‥‥‥」


私とルイスのやり取りを見て殿下は更に遠い目をした気がするけど、まぁ気にしても仕方ないわね

早速本題に入りましょう


「本日は殿下にお聞きしたいことがございます」

「なんだ?」

「殿下の婚約者、マリン・ササリア侯爵令嬢のについてですわ」

「何を聞きたい?」

「マリン様についてはおおよその調べはついております。率直に申し上げるなら今日明日には彼女をこの学園から追い出すのは簡単にできます」

「本当かっ!?」


私の報告に殿下は体を乗り出す勢いで反応した。まぁそうでしょうね、殿下は彼女を嫌ってらっしゃるものね?離れられるなら少しでも早く離れたいのでしょう

私は喜び期待で目をキラキラさせている殿下を見ながら


「普通はですね」

「え?」

「普通ならたとえ侯爵令嬢で、殿下の婚約者でも学園でいじめを行い、さらにその相手を退学、退職に追い込んだら普通はただではすまないのですよ?いくら相手が平民や下位の爵位子息令嬢でもね」

「‥‥‥‥」


殿下は私の言葉を黙って聞いています。だけどさっきまでキラキラさせていた目はどんよりと濁り、体もなんだかしゅんと縮こまってしまいました。かわいいと思ったのは内緒です。


「この学園の校長が誰か殿下もご存じですよね?」

「‥‥マリンの叔父だ」


私の問いに殿下は苦虫を噛み潰すように答えてくれました。そうなのです、このアルース学園の校長はハロルド・ナスター、マリン様のお母様であるササリア侯爵婦人の弟です。



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