Starbucks Coffee Familly Complex Story ~スターバックス家族動乱騒動の顛末~

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Starbucks Coffee Familly Complex Story ~スターバックス家族動乱騒動の顛末~

 私の両親はミーハーな人たちでした。


 彼らは田舎生まれの田舎育ちでした。だから、私たちが住んでいる国、日本で最後までスターバックスコーヒーの店舗がなかった県に、とうとうお店ができると知った瞬間、うれしすぎて、二人そろって気絶したそうです。生まれたばかりの子供だった私はその間放っておかれ、たまたまおすそ分けの野菜を持ってきてくれた近所の人がその状況を発見してくれなければ、脱水症状で死んでいたかもしれないのだそうです。

 とにかく、私の両親は、そのくらいスターバックスコーヒーが好きなのです。当然のことながら、私の名前は星子といいます。


 私は幼いころから、英才教育をなされてきました。もちろん、スターバックスに就職するためです。そのためには、漁師である父は、お金を惜しみませんでした。母も夜なべの内職をしてお金を稼いでくれました。

 おかげで私は小学生のときにはフランス、中学生のときにはイタリアに留学してコーヒーについて学び、高校に入学する前には、世界的なバリスタの資格を取るに至りました。父も母も、泣いて喜んでくれました。

 高校に入るとすぐに、スターバックスカフェのアルバイトの面接を受けました。

しかし、落ちました。アルバイトは十八歳以上、かつ、高校を卒業してからでないと雇えないとのことでした。理由は年齢。それでも父は落胆していました。

 そして十八歳の誕生日。その日の前に学校を自主退学していた私は、早速再びアルバイトの面接に向かいました。履歴書には「バリスタ」の資格の文字が躍っています。

 私はまた面接に落ちました。理由はわかりません。お店が教えてくれないからです。父は激怒して、泣きながらお店に訴えかけました。私の何が悪いのかと。資格は十分にあり、年齢にも達していると。しかし、お店側は聞く耳を持ってくれませんでした。父は酒に逃げて、仕事をしなくなりました。

 私が何度も面接を受け、そして落ち続けているうちに、母の友人の娘がスターバックスでアルバイトを始めました。別の母の友人はそれを知って、母に言ったそうです。「あそこで働いているのは、器量よしの娘さんばかりだからねえ」

 次の日、私は東京の高須クリニックというところへ行って、美容整形を受けました。別人のようになりました。私ではないかのように、美しく。これで家の借金は千二百万円になっていました。

 そして、二十歳になった私は、スターバックスの正社員試験に臨みました。書類審査は通りました。ぜひ「本社に」面接に来てほしい、と言われました。

 そして私はスターバックス・ジャパンの社長とお会いしたのです。これは受かったなと思いました。父も喜ぶだろうと。そしてしばらく話をしました。私を美人だ才媛だなんだとほめそやしたあと、社長は「ところで君、今夜は空いているかな。うひひ……」と聞いてきました。私は夕飯までには家に帰らないといけないので、と丁重に断りました。

 数日後、不採用通知が届きました。私の父が首をくくって死んだのは、その日のことです。

 毎日借金取りが来て、脅しをかけてくるようになりました。近所の人々は私と母にかかわりを持たないようにし始めました。私が風俗で働くために大阪に出たのはそのときです。思えば、海外留学に出たとき、それから面接で東京に行ったとき以外、私は一度も故郷から足を出したことがなかったのです。不思議な気分でした。


 風俗で有名になり、そこからスカウトされてAVに出ることで、私はなんとか二十代のうちに借金を返し終わることができました。そして故郷に戻ってきた私が駅前で目にしたのは、スターバックスのアルバイトスタッフ募集広告でした。

 また落ちるだろうと思いながらも、特にほかに自分に合うような仕事もないと思い、面接を受けてみると、なんと合格でした。資格の欄には、バリスタについては書き忘れていたというのに。私は急いでそれを電話で母に伝えましたが、あれだけ私がスターバックスで働くことに固着していたはずの彼女は「あらそう、よかったねえ」と言っただけでした。母が重度の痴ほう症になっていると知ったのはそれからしばらく経ってからです。

 スターバックスカフェで働き始めてしばらくたってから、私はすでに懇意になっていたその店舗の店長さんに、ふと聞いてみました。

 「あのう、アルバイトを採用する基準って、なんなんでしょうか。資格とか、関係あるんですか?」

 「まあ、女の子がかわいければ、ね」そういって彼は私の肩に手をまわしてきました。「ところでさ、星子ちゃんって、今夜あいてる?」鼻先に近づいた彼の髪から、ヘアワックスのにおいがぷんとしてきました。

 その夜、コーヒーである私に彼がミルクを注いで、その一年後、私は娘を生みました。


 私は娘が若いころから男を落とすためのノウハウを叩き込み、美容にもしっかり注意させて、男とはつきあわせないようにし、娘が十六歳になったときにアメリカのスターバックス本社に送り込み、社長を寝取らせて、奥さんと別れさせ、社の株の半分を手に入れさせて、娘の権力で、父を殺した人々を陰で葬りました。母の葬式には四千八百万円をかけました。


 私は毎日コーヒーを入れています。スーパーで買ってきたネスカフェ・ゴールドブレンド(インスタントコーヒー)です。とてもおいしいです。お昼は主人が仕事でいないので、家の近くに住んでいる、コカ・コーラやドクター・ペッパーのような活きのいい中学生と、情事を楽しむ予定です。

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