第11話

「キスまでしたのに何もしてこないし、告白も断れるって、先輩メンタル強すぎると思わない?」

「そうかな〜?あの子ってメンタルが強いってイメージあんまりないけどな〜。どっちかっていうと、ヘタレ?」

「それだ!流石、お姉ちゃん。じゃあ、どうしたらいいか決まったね」

「そうね。攻めて、攻めて、事後に責任を取らせるしかないわね」




そんな会話があったことはつゆ知らず、大介はいつもの駅にいた。

「先輩、好きです。付き合ってください」

「お前、一回目はあんだけ躊躇したのに二回目はそんなスラスラ言えんのな」

「当たり前じゃないですか。躊躇っている暇なんてありませんよ」

「いや、人生、休息も大事だぞ」

「先輩は、常に狙われてるんです。自覚してください」

「なにっ、まさか俺の命を狙ってる殺し屋が背後にっ?」

「あながち、間違いじゃないかもね。ねー大介?」


突然、後ろから声をかけられて、驚く大介。殺し屋よりも怖い女の子が後ろにいた。


「や、やあ、これは、美咲さんじゃないですか」

「昨日、葵ちゃんから変なメールが送られてきたんだけど?」

「変なメール?や、やだなあ、相葉くん、女の子に変な写真送るなんてセクハラだぞう。……ってお前、今、葵ちゃんって」

「メールに書いてあったのよ。諸々のことが」

「諸々って、お前どこまで言ったんだよ」

「全部です」

「は?」

「だから、全部ですって」

「お前、俺に対するカミングアウトって結構大事なことだったんじゃないのかよ?」

「だからこそです。美咲先輩には全て話さないと、フェアじゃないと思いまして」

「どこからくるんだよ。そのスポーツマンシップ」

「よう!モテ男!」

「お前には言われたくねえ。つうかお前も知ってんのかよ」

「俺は男の子をちゃん付けで呼ばねえよ。告白したってのは昨日のメール見て知ったけど。でも美咲はよく認めたよな、葵ちゃんのこと」

「認めるも何も、許容するしかないだろ?」

「ダイ、お前が話すとややこしくなるからちょっと静かに」

「認めたわけじゃないけど、昨日散々話し合ったから。それに個人的には嫌だけど、女の子的には応援したいから」

「昨日の敵は、今日の友ってこと?」

「そうね、恋敵ライバルと書いて友と呼ぶ感じかしら?」

「美咲先輩、頑張りましょうね」

「そうね。お互い、最善を尽くしましょう」


少し早いが、体育祭っぽい会話だった。


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お前、男の子なの? @zakiso

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