第10話

「ふっ、捨て台詞まで三下だったな」

「先輩、カッコつけてるところ悪いですけど、私達も行きませんか?先輩が大声で、その、くわえるとか、ついてるとか、言ったせいで周りが、こっち見てます」

「…それも、そうだな。っていうか俺の名言、下ネタばっかりじゃないか?」

「そうですね。最初も俺の尻を〜とか言ってましたし」

「カ、カッコわりー」

「ふふっ。そんなことないです。その、とてもカッコ良かったですよ?なんて…それより早く行きましょう。」


 照れ隠しのように、大介の手を引いて葵は歩き出した。



「で?なんで観覧車に乗ってんの?」

「先輩、真面目にデートしてますか?」

「その発言には矛盾を感じるんだが…」

「話をするなら二人きりが良いじゃないですか。先輩もそうでしょう?」

「まあ、そうかもな」


 少しの時間、葵は外を眺めていた。


「本当は今日で終わりにしようとしてたんですよ」

「何を?」

「先輩と関わるの」

「何で?」

「がっつく男はモテませんよ、先輩。理由は、そうですね、私が男の子であり、女の子だからです。こんな子と関わるとろくなことがないじゃないですか」

「そんなこと」

「あるんですよ。だから、せめて今日は先輩と…先輩で、遊ぼうと思っていたんです」

「俺で遊ぶって…やっぱり、水着はわざとだったのか…」

「女の子なりの照れ隠しです。拾わないでください。まあ水着はわざとですけど」

「まあ、でも終わりにしようとしていたってことは、それはやめたんだろ?」


 葵は小さくうなずいた。


「はい。そうです。それで、その」

「どうした?言いたいことは、はっきりと、だろ?」

「先輩、わ……とつ…あ……もら…ま……か?」

「なんて?俺にわかるように言えよ」

「そこまで言うなら先輩に伝わるように言いますよ!?いいんですね!」

「なんでヤケクソになってるんだよ?」




「先輩!私のを咥える覚悟はありますか!」




 真っ赤になった顔で彼女はそう言った。


「は?」

「先輩は最低です。女の子にこんなこと言わせるなんて…」

「お前が自分で言ったんじゃねえか!」

「それで、返事は?」

「いや、だから、俺に年下趣味はないって言っただろ?」

「なっ、ここまできて断るんですか!もう、本当、信じられません!先輩は最低すぎです。………………いいです。じゃあ、その気にさせます」

「無理無理。お前は永遠に俺の年下だからな」

「あっ先輩見てください、UFOです」

「無視かよ、つうかUFOなんか存在しないっての」

「あ、美咲先輩からメール来てる」

「なっ、あいつが何か言ってんのか?」


 動揺の余り席を立ってメールを覗こうとする大介。すると、葵が前のめりになった大介を捉え、唇を重ねる。


「UFOに引っかかってたらほっぺで許してあげたのに」


 悪戯っぽく、葵が笑った。






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