第6話
「あ、おはようございます。先輩」
そう言って、そこら辺の女の子よりよっぽど女の子らしく相葉葵が挨拶をしてくる。
「ああ、おはよう」
最初に彼を助けた元気はどこへいったのかというくらいに大介は覇気のない声で返事をした。
「先輩、なんだか元気ないですね。彼女さんと何かあったんですか?」
「彼女?」
「先輩と一緒にいた美咲先輩は彼女さんじゃないんですか?」
「なに?二人して私の話してんの?」
後ろから美咲が話しかけてくる。
「はい。えっと、先輩方って付き合ってるのかなぁって」
「付き合ってないわよ。その、今は」
「今はも何も、付き合ったことねえだろ。余計な誤解を与えるな」
「そういう意味じゃないわよ、変態」
そう言って美咲はそっぽを向いてしまう。
「つうか、お前、変態呼び今日も続くのか…」
「先輩方、付き合ってないんですか!」
「お前も、まだその話続けるのか…」
「ふふっ、付き合ってないんだ。あ、じゃあ拓実先輩と付き合ってるとかは?」
冗談かどうかわからない表情で葵が言う。
「葵ちゃん、ソイツはあんまりだぜ。俺にだってパートナーを選ぶ権利はあるよ」
傍から、拓実が口を挟む。
「お前なあ、そりゃあどういう意味だ?」
「そのままの意味だってーの。つうか怒るところそこか?お前、俺のこと好きなのか?」
「そんなわけねぇだろ。ヤリチンにすら選ばれないことに怒ってんだよ」
「あの先輩方、喧嘩は、ダメです」
「ほっときなよ。そいつら、いつもそうだから」
そうこうしているうちに電車がくる。三人のメンバーに一人を加えての登校だ。電車の中では特に大きな事件はなく、学校の最寄り駅に到着した。そこで葵が話をはじめた。
「あの、先輩方、どうしてあんなにあっさり引き受けてくれたんですか?」
「引き受けたって昨日のこと?そんな大層なことじゃないでしょ。困っている子がいたら助ける。それだけでしょ?」
「美咲の場合は葵ちゃんが男の子っていうのが大きい気がするけどね」
「うっさい。拓実」
「先輩は迷惑じゃなかったですか?」
「俺?俺もこいつらと同じだよ。困っている子がいたら助ける」
「大介が言うと下心が見え見えになるのはふしぎだよな」
「ふふっ、そうですか、先輩は僕のことをそんな目で見ていたんですね」
「さあて、どうだったかなあ?あ、俺、今日、日直だ。先行くな」
「あそこまで嘘が下手なやつも珍しいよな」
美咲の侮蔑の視線から逃げ出すように大介は学校までの道のりを急いだ。
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