第5話

 次の日、またも昼休みである。


「なあ、大介、昼飯を一緒に食うのは構わないけど、どこ向かってんだ?」

「一階の空き教室」

「ねえ、変態くん、ご飯に誘ってくれるのは嬉しいんだけど、空き教室まで行く意味は?」

「わからん」

「わからんって、誘ったのあんたでしょうが」

「まあ、入ってくれ」

 

 教室に入ると、前の方に女の子がいた。一見すると、であるが。


「なんか話があるんだと」


 すぐに拓実が反応する。


「俺にか?悪いんだけど、俺、彼女がいてさ」

「ちげーよ。お前はどうしてそう残念なんだ」

「あの、そろそろ、いいですか?」


 教室にいた子、相葉葵が話をはじめる。律儀にタイミングを伺っていたらしい。  


「改めまして、先輩方、昨日はありがとうございました。わた、その、僕の名前は相葉葵、二年の相葉美乃梨の弟です。折り入って先輩方にお願いが」       

「ちょっと待って」


 先につっこんだのは美咲だった。


「今、弟って、男の子ってこと?」

「どちらかといえば男の娘なんじゃない?」


 そう言って、ふざけるのは拓実だった。


「お前ら、気持ちはわかるが、話を聞け」

「あ、ありがとうございます、先輩。それでお願いなんですけど、その、実は、昨日みたいに痴漢にあうことってよくあってですね。だから、その」


 葵は少しだけ、大介に視線を向ける。


「明日から、一緒に登校してもらえませんか?」

「男の子だけど痴漢か。大変ね。それなら特に文句はないわ」

「あの、そんなあっさり許容してくれるんですか?」

「一緒に登下校するくらいどうってことないわよ」

「俺も特に異論はないよ。大介は?」

「俺も別にねえよ。ねえけど、お前の姉ちゃんEカップってマジか?」

「あんた、昨日のでまだ懲りてないの?」

「このまま引き下がったら、昨日の俺、殴られ損じゃねえか。真偽くらい確かめたっていいだろ?」

「先輩は、大きいのが好きなんですか?」

「もちろん」 

「つまり、小さいのは嫌いなんですね?」

「いや、何でそうな」


 大介が後ろからの殺気に気付くのとほとんど同時に、鋭い右ストレートがとんでいた。葵がにっこりと笑う。


(ちくしょう、可愛いじゃねえか…)


「あの、大丈夫ですか?」


 数分後、大介は誰かに話しかけられた。デジャブだったが昨日と違う点があるとすれば、正体が分かっている点だろう。


「お前も相当小さいもんな。気にしてたのか?」

「先輩、僕は男の子ですよ?」

 

 そう言ったときの葵は、とても嬉しそうだった。


























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