第4話
「そんなに言うなら可愛い美咲ちゃんがあんたと話をしてあげるわ」
「いや、話なんてそんな、何もねえよ」
「何もないってことはないでしょ。大体何見てんのよ?」
机の上に置いてあった資料を美咲が拾い上げる。瞬間、脱兎の如くダイスケは逃げ出した。しかし、兎といえばレースには負けると相場で決まっているのだ。無論、この兎も例外ではなかった。そうこうしているうちに大介は校舎の端に追い詰められていた。
「おい、落ち着け。一旦話し合おうぜ。なんか誤解してるって」
「話し合いを拒否したのはあんたでしょうが!これ、今朝の子だよね?胸の大きさとか載ってんだけど?」
「なんだろう?胸の大きさ?1、2、3とかかなあ?」
「AとかBに決まってんでしょ!」
「いや、C、D、E、Fとかあるだろうに。まさかお前…」
まんまと誘導尋問に引っかかてしまった大介だったが一矢報いることに成功する。しかし、中途半端な反撃はより一層の恨みを買うことになった。
「何よ!Eカップがそんなに偉いの?」
そう言って美咲はグーを作って構える。
「待て、お前、嘘だろ?ジャンケンだよな?最初はグー的な?な?」
「最後までグーよ!この変態!」
ボゴッと今朝よりもいい音がした。
「あの、大丈夫ですか?」
数分後、大介は誰かに話し掛けられた。校舎で倒れていたのだから当然である。
「ああ、大丈夫です」
「あ、まだ動かないほうが…」
立ち上がろうとして、大介はすぐ近くで声がしたのに気づく。続けて後頭部の温かい感覚と香水の香りがすることにも気づいた。
(もしかして、これは、あの伝説の!)
目を開けると、大介の顔の近くに今朝の少女の顔があった。
「あの、もしかして、相葉さん?」
少女は少し驚いたようだったが、すぐに返事をした。
「はい、そうです。今朝はありがとうございました。改めて、わた、じゃなくて、僕の名前は相葉
(相葉さんの顔がよく見える。ん?相葉さんの顔がよく見える?膝枕の経験はないが、Eカップにしてはなんか変じゃ?今朝も胸に違和感があったような…後頭部の感覚もなんだかもっさりしているような、そういえば、名前なんて?)
「あの相葉美乃梨さんですよね?」
「いえ、相葉美乃梨は姉です。その、僕は弟の相葉葵です。」
「はへ?うそだよな。へ?まじ?」
葵は、申し訳無さそうに頷く。
「ところで、先輩ちょっと相談があるんですけど」
男の子にしては随分と可愛らしい笑顔で、心なしか少し赤く染まった頬で、彼はそう言った。
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