第3話
学校の最寄り駅で、大介は二人に話しかけられていた。もっともそれまでの記憶が曖昧だが。
「ダイ、お前何やってんだよ」
「いや痴漢がいて、捕まえようとしたんだけど…」
「痴漢ならここにいるじゃない。女子高生の胸を揉みしだいていた変態が」
美咲は大介を睨みながら言った。
「それより、あの子は?」
「痴漢の被害者を加害者に近づけるわけないでしょ?あんたが気絶してる間に学校に行ってもらったわ」
少しの間、記憶がないのは間違いではなかった。
「あの子の名前は?」
「あ、もしもし警察ですか?痴漢を捕まえたんですけど」
「お前、やめろ、マジで捕まる」
「痴漢が被害者の個人情報を聞こうとしたら、普通は通報するでしょ?それに、その、あんな可愛い子の情報、あんたに、教えられるわけ…」
美咲が口ごもる。
「とにかく、学校に行かないか?大介が変態なのは今に始まったことじゃないだろ?」
「そうね。大介が変態なのは今に始まったことじゃないし、あの子もお礼を言ってたしね。一部は、本当なんでしょ」
「お礼を言ってたんなら、俺、通報され損では?」
「それとこれとは話が別よ。これからは変態と呼んであげようか?そういうの好きな人もいるわよね?」
変態と幼馴染みとヤリチン、なかなかないグループだった。
(我が2年2組の情報網を自称する武田くんによると、この学校には何人か可愛い子がいるらしいが、あの路線の電車で登校しているということであれば、それはおそらく2年4組の
大介は昼食を食べながら、武田くんのくれた資料に目を落とした。資料には、身長、体重、家族構成など、様々なことが書かれていた。大介は相葉さんに対する罪悪感と武田に対する不信感を募らせながらも、資料を読み進めた。右手が止まることを許してくれないのだ。
「何見てんの?」
今、最も話したくない女子の声が後ろからした。相葉さん本人より余程、である。
「よ、よお、2年でトップクラスに美しい顔ながら、ツンツンした雰囲気で誰も近づけさせないことから、女子からの人気が高い美咲さんじゃないですかあ」
「何よ?褒めてるの?」
「あ、当たり前じゃないですか!」
怪訝そうな表情をしながらも、少し口元がにやけているのを見て、大介は話を逸らすことに成功したのだと感じた。
(親父から教わった秘儀、ご機嫌とり、そして武田からもらった情報の合わせ技だ)
彼の父親がそうして窮地を脱出したのは事実だった。しかし、それは彼の父親が彼の母親に対して頭が上がらないということも意味していた。
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