第7話
「で、どうしてこうなった?」
俺は今、暗いところにいる。随分な説明になってしまったがそれ以上の説明のしようがない。あの日、まがりなりにもあいつらと同盟を組んで三日が過ぎた頃だった。あんなにカッコつけたものの現状、特に出来ることはないというのでそれぞれ普通に生活していた。俺も学校に行ってそれなりに高校生していたと思う。そんなおり、帰り道、俺は随分綺麗に気絶させられた。そして拉致られたというわけである。犯人はおそらく能力者関連だろうが。随分長いモノローグになったが許してほしい。
「ようやくお目覚めか、佐々木くん」
「俺に用があったならもっとマシなやり方があるんじゃないのか?」
噛み殺した笑い声が聞こえる。
「なに笑ってんだよ」
「いや、君がマヌケな格好をしているものだから、つい」
「目隠しして椅子に縛りつけたのはお前だろ」
「そうなんだけど…フフッ」
「お前、第何位だ?……ぜってえ許さねえ」
「おお怖い。そういう君こそ第何位の何の能力だい?」
「知ってんだろ、どうせ」
「君の口から聞きたいなあ」
「教えてやる義理はねえよ」
「それではこうしよう。君がそれを口にすればこちらは名前と目的を教えてあげる。どうだい?悪くないだろ?」
こいつ、どうして俺に言わせようとする?しかもこいつにとって不利な取引まで…
「目的を先に言え。そうすれば取引に応じる」
「随分、ふっかけてくれるなあ。ま、いいか。私の目的は君とお話することさ」
「生殺与奪の権利をお前が握ってる時点でお話なんか成り立たねえよ」
「私は別にお話に脅迫の意味をこめてはいないさ。でもそうだね。君があまりにも反抗的だと、首の一本や二本貰っちゃうかも」
「首は一本しかねえよ」
「いやだな。軽い冗談さ。指の一本や二本で我慢するさ」
「……そっちも冗談だとよかったんだけどな」
こいつ、ミアさんより全然やばい。
「……………俺は、第八位で『戻すコト』だ」
「うんうん。従順な子は好きだよ〜。私はきこ。よろしくね。早速だけど君にいくつか質問するからしっかり答えてね。嘘をつかなければご褒美があるから。楽しみにしててね」
ご褒美……だと?いや、騙されるな。この女はご褒美とお仕置きを混同してるタイプだ。で、でも、俺、こいつに嘘ついたら殺されちゃうかもしれないしな〜。いや、まいったな〜。
「それで、質問は?」
「ん。ご褒美と聞いてやる気を出したな〜。君も男の子だね〜」
「質問は?」
「うん。まずね、一つ目。君は任意で能力を行使したことはあるかい?」
「任意?殺されかけて発動したことはあるが」
「ほう、殺されかけてか。そのときのことを詳しく話してもらえるかな」
流石に、あいつらの能力は伏せつつ、俺はそのときのことを話す。
「別に能力のことを伏せる必要はないんだよ?」
「俺はこれでも義理堅いんでな」
「そういう意味じゃなくて。う〜ん。ま、いっか。私の能力は『知るコト』だから。この『殻』で起きたことは大体わかるんだ」
「信用できねえな。それなら何故俺に話を聞く?」
「実際の経験を聞きたいからさ。百聞は一見にしかずってね」
「それでも、だ。流石にあいつらのことは言えねえよ」
「お、カッコイイ。そういう人間性は好きだけど、もうちょっと信用してほしいかな。君の話に出てくるのって『気付くコト』と『隠れるコト』でしょ?」
「…本当にわかんのか?」
「そう言ってるでしょ?この『殻』内部の情報のアクセス権限は私がトップなんだから。まだ信用できないなら……君のパソコンの検索履歴とか、言おっか?」
「もういい。やめてください。信用します」
「ん。よろしい。それで検索履歴の話だっけ?」
「違います。能力の行使の話です」
「フフッ。そうだった、そうだった」
こいつ、俺をおちょくって遊んでやがる。
「君は任意で『戻すコト』を行使したことはないんだね?」
「そうなるな」
「そして『気づくコト』によると君は能力を『危機的状況に無条件で行使』したわけだ」
「それがなんだよ?別に変なことでもないだろ?」
「そうだね。変じゃない」
「(危機的状況に、か)」
君のすべてを失っても @zakiso
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