ショウドウの異世界恋愛

第16話

気がついたら……。

＊正道晴人目線～

遠くで俺を呼ぶ声がする。

「……。」

俺は全速力で走った。

何も考えない。

何も考えたくない。

ベアラ……。密命…。

この世界に来たとき、お尻に何か

入れられたけど……。

GPS？魔法バージョンの追跡装置がなんか

じゃないのか？

国王とか第一王子に狙われてるってウソぶいて

可愛いとか、好きとか言って油断させて

犯され道具のように、捨てられるんだ。

浄化どうのこうのも、おだてて油断させて

魔力……。あっ、魔石に魔力を注ぎこむ

都合がいい道具。

初めからウソで、体目当て…だったのか？

魔力が強ければ…召喚者なら…

誰でもいいんじゃないのか？

なぜ悔しいのか？

なぜこんなにも悲しいのか？

俺はベアラ…の事……。

相手は、くまの様な大きな男だ…。

なのに、なんだよー、この感情。

苦しい。忘れたい。

走っても走っても、まとわりつく重い感情。

「ハルーどこだ？」

やめてくれ。呼ばないでくれ。

俺を騙さないでくれ。

好きだを愛してるって言ったその口で

俺を騙すのはやめてくれ。

息が苦しくなり、足がもつれそうになった時、

フワッと温かな風に包まれた。

「天使様、こちらです。」

「……天使様？」

えっ？天使様って何のことだ？

さらさら流れるようなブルーブラックの髪に

光が当たっているかのような水色の

きれいな瞳。

ニッコリ笑うと、さらにこちらがドキドキして

さしまいそうなくらい綺麗な男性だった。

「天使様、失礼します。」

まただ。天使様？なんだ、それ？

まさか、俺のことなのか？

気づいたらお姫様抱っこをされ、

時折俺のほっぺをなでていた。

まさかまさかで、片手で俺を

お姫様抱っこしているのか？

しかも、周りの景色はまるで

車か何かに乗っているかのように

流れているぞ。

時速何キロで走ってるんだ？この男は？

ギュッと抱きしめられ、俺の頭のところから

スーハースーハーと荒い呼吸音がする。

どれくらい走ったかは、わからないが

男を抱えてすごいスピードで走るんだから

かなり疲れるだろう。

今更ながらに、ベアラ…さんから

助けてくれたんだよな？

あっという間に小さな家の前にたどり着いていた。

また、ふわっと何かの包み込むような魔力を

感じながら家に入ると、男は俺をお姫様抱っこ

しながら、家の中を掃除？しだした。

風魔法？でホコリを追い出し、シーツも

風に流されるようにはためいたあと

元のベッドにピシッとなっていた。

魔法は、掃除に大活躍だった。

器用だなぁ。このお掃除魔法便利だ。

俺も覚えよう。

あっという間に、きれいになった

部屋やベット。

ベッドにそっと降ろした。その時に

偶然男の唇が俺のほっぺにあたった。

「……。」

いやいや。ベアラのせいで自意識過剰に

なっているだけだ。

たまたま当たっただけだ。

照れて赤くなっている自分の顔を

隠したかった。

「天使様、大丈夫ですか？どこか……。」

恥ずかしいだけとはいえず、言葉を被せるように

「だ、大丈夫だ。あ、あなたは…。いや、

えーっと、助けてくれてありがとう？」

最後が？なのは、許して欲しい。

まだ人を信じ切れずにいるから、ほんと

申し訳ない。

「俺はハルト・ショウドウだけど、

あなた様はどちら様でしょうか？」

なんだ？この変な俺の言葉は？

相手の名前を聞き出すだけなのに

なんだ？この緊張感。

「申し遅れました。天使様。わたくしは

　ヒューゴ・カナップ、このカナップ領の

ギルドで働いてます。どうぞお見知りおきを。」

「ギルド…。ヒューゴさん。改めまして

ありがとうございます。」