第2話


何度目だろう?

何度目?どれくらい気を失っただろうか?

着ていたビジネススーツは無残な姿になっていた。

自分なりに奮発したスーツには泥や汗、

血や涙、色々な液体がこびりついてドロドロだった。

たくさんの色々なタイプのイケメンたちに

襲われたのだった。

必死になりながら、叫んだりしたり抵抗したが、

圧倒的な体格差、力強さに負けて、手足を

拘束されたあと、身体を触られてるうちに

気を失った。

気持ち悪い……。

わずかに残った体力。

男たちは、何か言った気がしたが

何を言っても無駄だと思い、喋る気も失せていた。

目覚めた俺に、1度は脱がされた服を

無理矢理着せ付けられ、汚れた布を

被せられ荷物抱きされた。

激しく揺れる乗り物?に乱暴に置かれた時、

あまりの痛さに、気を失った。


「うっ……。」

ガタガタ揺れる乗り物……。

目が覚めると汚れた臭い、かび臭い

匂いがして吐きそうだった。

しばらくすると、ガタガタなっていた乗り物から

引きずり下ろされた。

起きてるのがバレたらまた、恐ろしい事に

なりそうだから目を閉じていた。

顔を見つめられている気がした。

ゴツゴツした大きな手で、頭や頬を

触られ、男が何か呟いていたが

あまりの小ささに聞き取れなかった。


男が立ち去り、ガタガタする乗り物の音も

聞こえなくなってしまった。


召喚時に持っていたビジネスカバンや

購入したコンビニ商品は、奪われたのか

召喚の時あった気がしたが、

いつのまにかなくなっていた。

あー、身体が痛い。

もう、このまま……眠りたい。

指一本動かすのも、億劫だ。

開けていた目も重くなり、あたりは暗くなり

揺れている木々も見えなくなっていった。

やがて、ザワザワした音も聞こえなくなった。


~~~~~~~~~☆☆☆☆☆~~~~~~~~~


あの日、サービス残業で疲れ果てた身体から

自己主張するかのようにお腹の鳴る音が、

誰もいないオフィスに鳴り響いていた。

20代最後の日。

今日、いつも通り朝早くに起きてから、

身支度を整えた。駅の売店で購入したパンで朝食を

素早くすませ、昼は営業の合間に片手で飲める

ゼリーや野菜ジュース。

定時間際に新人の仕事ミスが発覚し、

相手先に謝罪をしに行ったり、

明日の会議の準備をしていると

終電ギリギリの時間になってしまった。

何度か、仕事場で泊まってしまった事もあるが……。

18歳の時、両親が亡くなってからは、

誰にも祝ってもらえなくなった自分の誕生日位は

甘いものが欲しくなった。


終電に乗り込み、安アパートから最寄りの

コンビニ帰りに、異世界召喚に巻き込まれてしまった。

正道晴人(しょうどう はると)と

同時刻、ゲームを買いに来た岡真琴(おか まこと)

は神子召喚されてしまった。


初めはおどおどしていたが、途中からにこにこ笑顔の

岡真琴。

俺は相変わらずの無表情だったかもしれない。

内心は、プチパニック状態だった。

イケメン騎士、イケメン国王、イケメン召喚士

とにかくどこかでみたような、イケメン。

高身長、スタイルは文句なしのイケメン。

色々なタイプのイケメンにいつの間にか

囲まれていた。


偉そうな…実際にはエライ高い身分の国王、

名前は長過ぎてというか、あまりにも酷い

もの言いにあきれてしまい、名前を覚える気には

ならなかった。


要約すると2人の神子は不吉とされ、

幼さが残る可愛い岡真琴が神子として

王城に残り、この世界の浄化を行うらしい。


どこかで見た様なイケメン達に囲まれて

笑っている岡真琴。

正道は召喚場所から追い出されてしまった。

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