第29章 明日の作戦確認にウンザリ
一刻ののち。
宿屋の一室に聖真の一行が集まって、椅子とベッドと低い棚に掛けて小さなテーブルに広げられたバイアテラノアの地図を囲んでいた。
「状況を確認しやがりましょう」
国境検問所での手続きを終えて戻ってきたフレデリカが語りだす。
「一番の問題は、円陀Bケンプ共和国に救世主様を導くという預言を、女帝国や魔帝国も取得している可能性でやがりましょうね」
「だからこそ、妖精門による転移は避けましたな」脇からルワイダも言う。「預言のを護送するなら大規模な護衛を伴うと予測されるだろうことも見越して、少数精鋭にもしました」
チェチリアも補足する。
「水晶による連絡も盗聴を警戒して極力してこなかったが、国境に不審な動きがないことも確認しての出発だった。もし何事かあれば、計画中止の指示が入る手筈だがそれもない」
フレデリカが念を押す。
「検問所での手続き時も、怪しい点は見受けられねーでした」
「だとしても、ここがケンプに向かう一つの手立てなのは間違いないからね。警戒を怠らず速やかに移動する必要がある」
勇者は街中の宿屋から目的地までを指先でなぞる。コーツ側の双頭蛇西灯台前からビクトリア側の東灯台方向への、街で最も広大で真っ直ぐな〝双頭蛇中央大通り〟だ。
「宿と馬車小屋、検問所、大妖精門は直線で四
「幸運を祈りましょう」
述べて、ルワイダはまたもや一文字を切った。
「はあ」
溜め息をついて、一台しかないベッドに蓮華坐で座っていた聖真は倒れ込む。
「とにかく朝まで寝るしかないってことか。おれはさっさとそうするよ、みんなも早く休んだ方がよさそうだな。おやすみ」
マクマードでは四人別々の部屋だった。あそこは人自体が疎らだったが、バイアテラノアは人口に見合った大きな宿場がいくつかあったので、最低限女性陣は別だと思っていたが。
しーん。
誰も動かなかった。気まずそうに残る三人が顔を見合わせている。
「……いや」チェチリアは、僅かに頬を朱に染めながら解答した。「全員同室にした」
「……」
しばらく沈黙してからはっと我に返り、聖真は苦言を呈する。
「ベッド一つしかないんですけど!?」
馬車ではみんな一緒に寝ていたが、ベッドはより狭い。部屋自体も狭い。何よりベッドで一緒というのがいやらしい。
「救世主を無防備にするわけにはいかないからね」チェチリアは弁明する。「重要な局面だし、同室で一晩警護するつもりだよ」
「二人くらいは床でも寝やがれそうですけれど」
もじもじしながらフレデリカが尋ねる。
「誰か一人は聖真様と同じベッドがいいでしょうね。だ、誰と寝てぇですか?」
「やめてそんな言い方!」
聖真は必死で訴える。
とはいえ実際、そういう割り当てでしか寝れそうにない。
「あーもう、ならおれが床で寝るかもしくはルワイダと寝るよ! ましそうだし!!」
男子高校生が苦渋の決断をすると、他三人が怪訝な顔をし、やがて鳥人間が申し訳なさそうにほざいた。
「ふむ。ですが愚僧はそういう趣味はございませんので、あまり期待しないでください」
「おれだってねーわ!!」
結局、聖真はベッドで寝かせようとするみなを振り切って、床で寝ることを強行したのだった。
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